国立病院機構九州癌センター乳腺科部長の大野真司氏は、5月15日、長崎市で開催された日本外科学会の国際シンポジウム「乳癌治療におけるControversy」の中で、「化学療法、分子標的薬のControversy」というタイトルで講演を行い、手術後の治療とリスク評価をウェブサイトで試みる「Adjuvant! Online」(https://www.newadjuvant.com)を紹介した。

 このサイトでは、癌の術後の治療法の選択について、6から7つの因子を選定することで再発のリスクを算出する。現在は更新作業に入っており利用できないが、患者にどのくらいのリスクがあるかを説明するのに役立つという。大野氏はこのサイトのデータが北米のデータに基づいて作られており、日本の過去のデータを照らし合わせていくことが重要だと指摘した。

 乳癌では、転移陰性でホルモン受容体陽性HER2陽性という例や、転移陽性(1〜3個)でホルモン受容体陽性HER2陰性という例のような、中等度のリスクの初期乳癌患者の治療の選択が最も議論のあるところで、実際にそうした患者が最も多いと大野氏は話す。現状では、海外のガイドラインで推奨されている治療選択(手術のみ、手術とホルモン療法、手術とホルモン療法と薬物療法)が、必ずしもそのまま選ばれていない。同氏は4つの中等度リスクの症例を「Adjuvant! Online」に当てはめ、10年以内の再発のリスクが手術のみだとどれくらいで、手術とホルモン療法だとどのくらいで、手術とホルモン療法と薬物療法だとどのくらいと具体的に説明し、有用性をデモンストレーションしてみせた。

 同氏は次に、遺伝子を用いて分子標的薬も含めた薬物療法まで受ける患者を見分けることが将来的な治療の選択法になると語った。具体的には、有効性が報告されている70遺伝子を使った方法と21個の遺伝子を使う「OncotypeDX」といった製品を紹介。現在、それぞれの有効性を検証するための大規模臨床試験MINDACT試験とTAILORx試験が行われていることを説明した。

 最後に、わが国でも中等度リスクの患者に対する治療法を検証するための臨床試験であるNSASBC-06が始まっていることを紹介した。NSASBC-06試験はホルモン受容体陽性でN0の閉経後の患者を対象に、まずホルモン療法を6カ月行う。そして、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定状態(SD)が得られた患者を、手術後に薬物療法を行ったあとホルモン療法を4.5年行う群と、ホルモン療法を4.5年のみ行う群に無作為に割り付けて評価するものだ。