軟部悪性腫瘍(肉腫)は全腫瘍の1%と少なく、発生率は10万人に2人程度。まれな疾患であるため、診断や治療に関する認識が低い医療関係者も多いことが、大阪大学大学院医学系研究科消化器外科の西田俊朗氏らの調査で分かった。データは5月15〜17日に長崎市で開催された日本外科学会で発表された。

 西田氏はパネルディスカッション「軟部悪性腫瘍に対する治療戦略」の中で、その診断と治療指針を概説するとともに、大阪大学をはじめとする近畿にある20の医療機関を対象に、軟部肉腫についてアンケート調査を行った結果を報告した。

 軟部肉腫は四肢に発生しやすいため、主に整形外科領域の疾患となっている。日本整形外科学会では「軟部腫瘍診断ガイドライン」を2005年に策定。海外ではNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)やEuropean Society for Medical Oncology(ESMO)によるガイドラインがある。

 ところが西田氏らのアンケート調査の結果、ガイドラインの認知度は低く、NCCNのガイドラインで3割強、日本整形外科学会では2割弱、ESMO にいたっては1割に満たなかった。さらにUICC/AJCCの病期分類を「知らない」が40%を占め、「使用した」は5%と少なかった。

 また肉腫には50種類以上もの組織型があり、確定診断には細胞遺伝学的検査が必要になることもあるが、現時点では「考慮する」と「行わない」が大半を占め、細胞遺伝学的検査を行うと答えた施設はなかった。

 一方、治療に際し、ガイドラインで勧める術前の生検に関しては、アンケート調査でも「生検をする」が20施設中7施設、「生検を考慮する」が10施設と、「生検に対しての認識はある」と西田氏。

 治療は切除可能であれば、外科的な切除が第一選択とされ、切除不能の場合は放射線療法や化学療法が行われる。化学療法ではドキソルビシンやイホスファミドが使用されてきたが、奏効率は30%以下と低く、トラベクテジン(trabectedin)などの新薬に期待がかかる。未治療の粘液様脂肪肉腫51人を対象にトラベクテジンを投与した試験で、奏効率は51%と報告された(The Lancet Oncology 2007;8:595-602)。

 このため欧州では2007年に、アントラサイクリン系およびイホスファミド治療後に増悪を来した切除不能・転移性の軟部肉腫を対象に、トラベクテジンは認可されている。だが、「組織型によって奏効率が異なる」(西田氏)ため、薬剤の選択には組織型の決定が重要になってくるという。

 日常診療で遭遇することのほとんどない軟部肉腫。データを集積することが困難で、専門家は少なく、エビデンスも不足しているという。西田氏は「将来的には、軟部肉腫に関する臨床情報の共有や専門機関の確立が望まれる」と述べた。