岡山大腎・免疫・内分泌代謝内科学の槇野博史氏

 岡山大腎・免疫・内分泌代謝内科学の槇野博史氏(写真)は6月1日、第51回日本腎臓学会のLate Breaking Clinical Trialsにおいて、昨年Diabetes Care誌に発表されたINNOVATION試験の最新解析結果も合わせ報告し、高用量テルミサルタンによる早期腎症抑制作用に「降圧を介さない機序」が関与している可能性を示した。

 INNOVATION(Incipient to Overt: AngiotensinII Blocker Type 2 Diabetic Nephropathy)試験は、微量アルブミン尿を認める2型糖尿病患者に対するテルミサルタンの顕性腎症の進展抑制作用をプラセボと比較した無作為化二重盲検試験である。514例が、テルミサルタン80mg/日群(168例)、テルミサルタン40mg/日群(172例)とプラセボ群(174例)に割り付けられ、最低1年間追跡された(平均1.3年間)。

 その結果、テルミサルタン群では用量を問わず、プラセボ群に比べ顕性腎症への移行が有意に抑制された(いずれもp<0.001)。また、本試験参加者の32%に相当する正常血圧患者のみで検討しても同様で、テルミサルタンは用量を問わずプラセボ群に比べ顕性腎症への移行を有意に抑制していた。

 一方、微量アルブミン尿の正常化は、テルミサルタン80mg/日群の21.2%、40mg/日群の12.8%に認められ、いずれもプラセボ群の1.2%に比べ有意に高値だった(p<0.001)。

 今回の発表では、試験開始時からの降圧度別に見た「顕性腎症への移行率」が報告された。収縮期血圧の降圧度4分位別に「移行率」を比較すると、テルミサルタン40mg/日群では降圧度が大きくなるに伴い「移行率」は減少したが、80mg/日群では血圧が低下しなかった患者でもプラセボ群、40mg/日群に比べ「移行率」は著明に減少していた。

 「高用量テルミサルタンでは、降圧以外の機序も作用して顕性腎症への移行を抑制している可能性がある」と槇野氏は指摘した。
 
 なお、INNOVATION試験のデータを用いた費用対効果解析も紹介され、テルミサルタン80mg/日による治療は、40mg/日に比べ費用対効果は優れているとのデータが示された。
 
 コメンテーターを務めた名古屋市立大学心臓・腎高血圧内科学の木村玄次郎氏は、わが国では糖尿病性腎症発症抑制の改善が米国白人に比べ劣っている可能性を指摘し、日本人でこのようなエビデンスが得られている以上、糖尿病患者の腎機能低下早期から積極的に介入すべきだろうと述べた。