福岡大学心臓・血管内科学教授の朔啓二郎氏

 慢性腎臓病CKD)に高血圧と糖尿病が合併していると、合併していない場合に比べ、冠動脈疾患CAD)の発症リスクは6.5倍にも跳ね上がることが分かった。第51回日本腎臓学会のシンポジウム4「メタボリック症候群による腎障害の機序と対策」で、福岡大学心臓・血管内科学教授の朔啓二郎氏(写真)が報告したもので、「早期からCKDの有無に注目し、高血圧や糖尿病を合併している場合は、冠動脈造影CTなどを行い、イベント発生の予防に努める必要がある」と朔氏は強調した。

 朔氏らは、CKDとCADでは、同じような機序でHDLコレステロールが低下している点に注目、CKDとCADに、メタボリック症候群の診断基準の4因子(内臓脂肪、高血圧、脂質異常、糖尿病)がどう関与しているかを検討した。

 福岡大病院心臓・血管内科を受診した、CADが疑われる313人を対象に冠動脈造影CTを実施し、冠動脈狭窄度や石灰化スコアを求めた。また、CTにより内臓脂肪や皮下脂肪の面積も求めた。腎機能障害の重症例(Cr≧1.5mg/dL)や透析中の患者、心機能低下症例(EF≦40%)など、腎機能、心機能が大きく低下している患者は除外した。

 患者背景を、CKDあり(218人)とCKDなし(95人)に分けて比較したところ、CKDなしではGFRが49mL/min/1.73m2で、CKDありの76mL/min/1.73m2に比べ、有意に低値だった。年齢(CKDなし63歳、CKDあり68歳)、高血圧(同68%、79%)、高尿酸血症(同7%、25%)にも有意差が認められたが、腹囲や内臓脂肪面積には有意差はなかった。

 また、冠動脈病変枝数が多いほど、メタボリック症候群の4つの因子の数も多かった。病変枝数が多いとGFRも有意に低く、GFRがCADの重症度に関連していることが示された。

 次に、CADありとCKDありの症例について、メタボリック症候群の4因子の関与を検討した結果、CKDには高血圧と糖尿病が関与していた(有意差あり)。CADにも高血圧が関与し(有意差あり)、糖尿病とも関連がみられた。さらに、冠動脈の石灰化の進展にはCKDの有無、GFRとの関連性も認められた(いずれも有意差あり)。

 そして、CKDの患者で、高血圧も糖尿病もない患者のCADのリスクを1とすると、CKDに高血圧を合併した場合の相対リスクは4.0倍、糖尿病の合併は1.8倍、両者を合併していると6.5倍に上ることが明らかになった。以上から、朔氏は「ローステージのCKDでも、高血圧や糖尿病が合併すると、CADが加速される」と注意を喚起した。

 さらに、朔氏らは、CKD患者では、HDLコレステロールもLDLコレステロールも低下する低脂血症になっているのに、CADリスクが高まる理由を調べた。

 血漿リポ蛋白のプロフィールをキャピラリ等速電気泳動(cITP)法という独自の手法で解析したところ、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)のうち、small dense LDL(超悪玉)分画の、陰性荷電LDL(超超悪玉)だけが増加していることを突き止めた。

 朔氏は「HDLコレステロールの低下に加え、この超超悪玉LDLコレステロールの増加が、CKDでは問題だ。これに対しては、高用量のスタチンが有効との報告があり、CADとCKDは同じような病態ととらえることもできる。それだけに、早期からのCKD対策が求められる」と述べた。