北海道循環器病院の菊池健次郎氏

 循環器系疾患にしばしば合併することが知られている動脈硬化性腎動脈狭窄RAS)が見落とされていることが多い──。北海道循環器病院の菊池健次郎氏(写真)は、第51回日本腎臓学会総会の特別企画「一般臨床医のための腎臓学」で、かかりつけ医による高齢者を対象とした慢性腎臓病管理の注意点として、RASの見落としについて語った。

 RASの予測因子として知られているのは、高齢(55歳以上)での発症、血圧高値(特に拡張期血圧)、降圧薬服用していても急に血圧が上昇すること、冠動脈疾患または末梢動脈疾患を合併する慢性腎臓病(CKD)、腹部血管雑音、片側腎萎縮、RA系抑制薬による腎機能の悪化、動揺性の尿異常と腎機能および血圧の変化などだ。

 RASは、心カテを受ける冠動脈疾患疑い患者の15〜18%。冠動脈疾患患者のうち、1枝病変患者の10%、2枝患者の20%、3枝患者の30%に合併していると報告されている。また、70歳以上の高齢者のうっ血性心不全患者では34%、動脈瘤や閉塞性末梢動脈疾患患者の28%に合併している。

 心カテを受けた連続532例を対象に解析した調査結果では、腎動脈狭窄例は36例と有病率6.8%で、RASがあった患者(n=36例)となかった患者(n=496)を比較すると、年齢がRAS(+)で71.2±8.0に対してRAS(-)は65.4±11.6(p=0.0031)、高血圧がRAS(+)で74.3%に対してRAS(-)が48.4%(p=0.0003)、冠動脈疾患(+)で72.2%に対して冠動脈疾患(-)が48.4%(p=0.0031)だった(Yamashita et al Hypertens Res,2002;25:553-557)。

 菊地氏は、「RASを見落としていることで、本態性高血圧として治療されてしまっていることが多く、そのため透析導入になってしまっている例が多いのではないか」とし、高齢者の腎疾患診療で注意すべきと締めくくった。

【追加】6月9日に、心カテを受けた患者を対象にした腎動脈狭窄例の調査結果に関して、参考文献名を追加しました。