宮崎内科医院院長の宮崎正信氏

 プライマリケアで慢性腎臓病CKD)診療を行う際には、尿蛋白やクレアチニンの検査結果はこれまでとは違った解釈をすべきだ――。宮崎内科医院院長の宮崎正信氏(写真)は、第51回日本腎臓学会総会の特別企画「一般臨床医のための腎臓学」で、プライマリケアが慢性腎臓病(CKD)診療の際の検査結果の評価についてポイントを語った。

 まず宮崎氏は、「学生の頃は腎臓というと組織を見せられて頭が痛かったが、現在は検尿とクレアチニン値測定で腎臓が悪くなっているかどうかを診断が可能になっている」と指摘し、適切に腎機能評価をすべきとした。

 腎機能評価をすべきは、高血圧、糖尿病、肥満(BMI>30)、喫煙がある患者だ。これまでの研究から、10年以内に蛋白尿が出現するリスクが高いのは、血圧が150〜160/95〜100mmHg。血圧が160以上/100以上、高血圧(治療中)、糖尿病(治療中)、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、肥満、喫煙だ。そして、10年間に推定糸球体濾過量(eGFR)が60以下にとなるリスクファクターは、蛋白尿2+以上、血尿・蛋白尿1+がある。

 検尿による尿蛋白検査については、従来は1日間蓄尿による測定方法が実施されてきたが、特に外来診療では繁雑で手間がかかるため、最近ではほとんど行われていないようだ。

 宮崎氏は、「最近、随時尿でも1日尿蛋白量の推定が可能になってきた」と指摘した。随時尿による1日尿蛋白量を、尿中蛋白濃度(mg/dL)/尿中クレアチニン濃度(mg/dL)で求めるもので、この値は1日尿蛋白量と良く相関することが分かってきたからだ。

 尿蛋白は試験紙法によって評価が可能で、試験紙法による健診データから蛋白尿1+以上で、蛋白尿がない場合と比べて有意に腎不全の累積発症率が高まるといった報告もある(Kidney Int, 2003;63:1468)。しかし、「わずかでも蛋白尿が出ていると腎不全の累積発症率は高まっていく。正確に腎臓の状態を把握するためにも尿中蛋白濃度(mg/dL)/尿中クレアチニン濃度(mg/dL)の測定がよい」と語った。なお、この特別企画で会場から腎機能評価に微量アルブミン尿が有用というエビデンスが蓄積してきているが、微量アルブミン尿は糖尿病がある場合のみしか保険でカバーされないという質問があり、今後、腎臓学会による働きかけが必要としつつ、試験紙法により蛋白尿が±という結果の患者のほとんどが微量アルブミン尿であったという疫学調査があることが報告された。

 また、血尿については血尿を呈する患者が非常に多いことから、CKDでは重要な評価項目とされていないものの、中年以降、初めて血尿が見られた場合は尿細胞診で悪性腫瘍かどうかを評価する必要があること、急に血尿が増加したり、血尿が肉眼的に確認できるようになった場合は専門医に紹介すべきとした。

 CKDの診断項目の1つに、GFR 60mL/min/1.73m2未満があり、日本でも昨年発行されたCDK診療ガイドに記載されている。ただし、血清クレアチニン値と年齢から求めるeGFRはプライマリケアではまだ一般的ではなく、eGFRの算出に必要な血清クレアチニン値の測定を検査会社に依頼しても、結果にはeGFRが記載されていないのが現状だ。

 宮崎氏は、現在、日本腎臓学会が検査会社に対して、eGFRが検査結果に印刷されるよう働きかけているが、まずは血清クレアチニン値のわずかな変化に注意を払う必要があると指摘した。血清クレアチニン値が1.1mg/dLを超えた段階でGFRは60mL/minを切っており、1.3を超えたらもう50mL/minを切って重症度はステージ3と腎機能が低下していることを十分に認識し、血清クレアチニン値のわずかな増加でも腎機能は大きく低下していると判断するよう頭を切り換える必要があると語った。