東大腎臓内分泌内科腎臓再生医療講座の高瀬敦氏

 東大腎臓内分泌内科腎臓再生医療講座の高瀬敦氏(写真)らは5月30日、第51回日本腎臓学会で、EPAによる抗炎症作用並びに腎保護作用をThy-1腎症で検討した成績を報告した。EPAは、転写因子NF-κBの活性化を抑制するIκBαの安定化を介してVCAM-1やインターロイキン(IL)-1などの発現を抑制し、その結果、尿細管の炎症が軽減されている可能性が示された。

 同氏らはin vivoでThy-1腎症におけるEPAの腎保護作用と抗炎症作用を評価した。片腎ラットにEPAを2日間投与後、Thy-1抗体を注射し、非EPA群と腎障害の発症を比較した。

 その結果、蛋白尿と尿酸値はEPA群と非EPA群間で差はなかったが、Thy-1注射3日後の尿細管障害、間質へのマクロファージ浸潤はEPA群で有意に抑制されていた。

 Thy-1注射3日後の遺伝子発現を検討すると、EPA群でNF-κB活性が有意に抑制されていた。関連遺伝子を調べると、非EPA群で認められていたIκBαの発現減少がEPA群では抑制されており、EPAによるIκBα安定化作用がin vivoでも確認される形となった。

 またEPA群ではNF-κB依存性に発現する炎症性因子VCAM-1とインターロイキン(IL)-1βの発現もEPA群では低下し、EPAによる抗炎症作用はIκBα安定化を介すると考えられた。

 上記検討ではEPA群におけるクラステリンβ(IκBα安定化因子)の著明な発現増加も認められている。高瀬氏らはEPAとクラステリンβの関係をin vitroでも検討している。

 近位尿細管上皮細胞をリポポリサッカライド(LPS)にて刺激したところクラステリンβ発現は増強したが、EPA前処置によっても同等の発現増強が観察された。また同じ系においてEPAはLPS刺激後のIκBα発現減少を抑制した。発現減少抑制作用はクラステリンβノックダウン細胞においても認められたため、EPAによるIκBα安定化作用にはクラステリンβ増加作用とは異なる機序も示唆された。

 今後、比較的軽度の腎障害モデルにおける検討が期待されよう。