防衛医大腎臓内科の熊谷裕生氏

 慢性腎臓病CKD)患者の降圧療法における治療目標やRA系抑制薬投与時に起こる血清クレアチニン値の急上昇、高カリウム血症の原因や対策などをまとめた「CKD診療ガイド―高血圧編―」が7月までに発行される。このガイドは、日本腎臓学会と日本高血圧学会のCKD対策合同委員会がまとめたもので、5月30日から開催された第51回日本腎臓学会総会の特別企画「進行性腎障害における診療指針の作成」で、防衛医大腎臓内科の熊谷裕生氏(写真)が発表した。

 この「CKD診療ガイド―高血圧編―」では、これまでのCKD診療ガイドと比較して、CKDにおける降圧目標(130/80mmHg未満、尿蛋白が1g/日の場合には125/75mmHg未満)や第一選択薬としてRA系抑制薬を推奨している点などは変わらないが、第3選択薬までの各段階での注意点、CKDの原疾患別にみた蛋白尿レベルと降圧療法の目安、長期的な腎保護作用獲得を示唆する治療開始早期の所見、RA系抑制薬投与時の高カリウム血症の原因と対策などをわかりやすくまとめた点が新しい。

 第一選択薬であるRA系抑制薬は、血清カリウム値が5.5mEq/L未満で維持可能であれば、少量から漸増していくこと、ACE阻害薬/ARB併用を考慮しても良いこととした。すでに腎機能低下(特に血清クレアチニン値が2mg/dL以上)がある場合、まれに投与開始時に急速に腎機能があったり、高カリウム血症に陥る場合があるため低用量から慎重に開始するとした。

 また、体液過剰(食塩感受性)であった場合、第二選択薬は利尿薬とした。(1)腎機能正常であればサイアザイド系利尿薬、(2)腎機能低下例としてGFR30mL/min/1.73m2(血清クレアチニン2.0mg/dL以上)であればループ利尿薬、(3)ループ利尿薬単独で体液量コントロールが困難である場合はループ利尿薬とサイアザイド系利尿薬を併用――とした。心血管疾患(CVD)ハイリスク患者では第二選択薬としてCa拮抗薬とした。第三選択薬は、第二選択薬で利尿薬を使った場合はCa拮抗薬、Ca拮抗薬を使った場合は利尿薬となる。

 CKDの原疾患別にみた蛋白尿レベルと降圧療法の目安では、(1)糖尿病性腎症、糸球体腎炎の場合、糸球体血圧は上昇、尿蛋白は通常1g/日以上で、降圧目標は125/75mmHg未満だが尿蛋白が1g/日未満では130/80mmHg未満でも可とし、推奨降圧薬はRA系抑制薬、(2)腎硬化症、多発性嚢胞腎、間質性腎障害の場合、糸球体血圧は正常〜低値、尿蛋白は通常1g/日未満、降圧目標は130/80mmHg未満、降圧薬は特に種類は問わないが尿蛋白が増加した場合は糸球体血圧の上昇が推定されるのでRA系抑制薬による積極的降圧が望ましいとした。

 長期的に見た腎保護作用獲得を示唆する治療開始早期の所見として、(1)治療開始6カ月以内で、治療前に比べて30%以上の蛋白尿減少、(2)治療開始4カ月以内で、治療前に比べて血清クレアチニンにして30%までの上昇である糸球体濾過量の減少(ベースのクレアチニン値は3mg/dL未満)を指摘。いずれも糸球体血圧の低下を反映するものだとした。

 RA系抑制薬投与時の高カリウム血症の原因として、脱水などによるカリウム排泄能低下を原因とする急激な腎機能低下、細胞内カリウムの細胞外への流出を原因とするアシドーシス、果物や生野菜などによるカリウム過剰摂取、カリウム保持性利尿薬を併用することによる副作用を上げた。対策として、急激な腎機能低下は腎臓専門医に紹介、アシドーシスは炭酸水素ナトリウムやループ利尿薬の使用、カリウム過剰摂取はK摂取制限やイオン交換樹脂、併用薬に抗アルドステロン薬(スピロノラクトンやエプレレノン)を使用している場合は中止とした。

 このほか、CKD診療ガイドでも触れられているが、RA系抑制薬投与時に血清クレアチニン値を急上昇させる原因として、腎動脈狭窄(特に両側性)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やシクロスポリン投与、心不全、脱水(特に高齢者では夏場や下痢、食思不振時)、尿路異常(特に水腎症)などを挙げ、これらの可能性があるときはRA系抑制薬を減量もしくは中止して専門医に紹介するとした。