高齢化とともに多剤併用例が増えているだけでなく、新型薬剤も増えていることから薬剤性腎障害の発症リスクが高まっている。そのため、薬剤性腎障害の存在や早期発見のポイントについて理解を促進する診療ガイドラインが必要だと、千葉大学大学院薬学研究院医薬品情報学教授の上田志朗氏は5月30日、第51回日本腎臓学会総会のワークショップ「薬物と腎障害」で訴えた。

 ガイドラインが必要な背景には、高齢化、多剤併用、新規薬剤の増加などがある。

 高齢化については、加齢に伴い腎機能の生理的な低下と慢性腎臓病(CKD)頻度の上昇に注意が必要だ。上田氏は、「40歳の患者と80歳の患者とに同じ治療法を施行するなど、全身機能や体重などを考慮した用量決定が行われていない場合が多い」と指摘した。

 多剤併用では、併用時に相乗的・相加的にリスクが上昇することが注意点だ。例えば、抗癌剤のシスプラチンと他剤の併用療法を行っていて免疫機能が低下することによる感染症罹患で抗生物質を追加するケース、原因不明の発熱による緊急時に複数の抗生物質を併用して急性腎不全が起こってしまうケース、高齢化に伴い複数の疾患を持つ患者が増加して気付かない間に投与薬剤が増えて腎障害が起こるケースなど、薬剤性腎障害のリスクが高まってしまう症例が増えているからだ。

 また、新規薬剤の増加によって新しい発症機序の腎障害が出始めている。インターフェロンによるネフローゼ症候群、エダラボンによる急性腎不全及び多臓器不全のほか、最近ではパミドロン酸二ナトリウム水和物によるネフローゼ症候群と腎不全がHIV感染症を持つアフリカ系米国人で新しい腎疾患として初めて報告されるなど、新薬の登場に伴って注意すべき腎障害も増加している。

 さらに、内科医であっても検尿をしない場合が多いこと、薬剤性腎症の原因薬剤を知らないため何をモニタリングすべきか知らない場合があること、腎専門医が薬剤性中枢神経疾患を診断可能かどうかなどを例に挙げて、専門分野が細分化していることで非専門分野に対する知識が低下していることも問題点として浮上してきているという。

 これまでに、上田氏も参加する日本腎臓学会マニュアル作成委員会が厚生労働省から委託され、急性腎不全と間質性腎炎に関する重篤副作用疾患別対応マニュアルを作成し、07年6月に厚生労働省のホームページで公開したほか、近日中にネフローゼ症候群の対応マニュアルを公開予定だ。また来年には腫瘍崩壊症候群の対応マニュアルを予定している。今後は、薬剤性腎障害の予防やモニタリング、早期発見・治療のほか、腎毒性薬剤の用量決定因子など使用時の注意点、腎疾患治療時の治療薬の使用法やCKD患者での医薬品の選択や使用法などを網羅する、専門医だけでなく内科系や外科系の医師が利用しやすいガイドラインが必要だと指摘した。