特定健診で受診勧奨を受けて来院した患者に対しては、常に慢性腎臓病CKD)になっていないかどうか確認して欲しい――。福島県立医大第三内科教授の渡辺毅氏は、5月30日に開幕した第51回日本腎臓学会総会の特別企画「わが国におけるCKD対策の新たな展開」で、プライマリケアにおける腎臓機能のチェックや早期治療の重要性を指摘した。

 CKDは、末期腎不全のリスク因子であるとともに、心血管イベントのリスク因子であることが明らかになり、CKDを進行させないことの重要性が叫ばれている。一方、CKDは早期に発見し、治療を開始すれば進行抑制とともに寛解も得られる可能性があることから、腎機能低下を早期に発見することが求められている。

 渡辺氏はまず、これまでの大規模試験などを例に上げ、CKDのステージ3までの腎障害患者、つまり推定GFR(eGFR)が30〜59mL/min/1.732以上の患者であれば腎機能が回復するが、CKDがステージ3よりも悪化すると(eGFR<30mL/min)寛解が得られる可能性が低くなることを紹介し、早期発見と早期の治療開始の重要性を示した。

 一方、平成17年の厚労省の患者調査から、健診受診率は、糖尿病では30%(受診患者数247万人/推定患者数820万人)、高血圧では22%(受診患者数781万人/推定患者数3600万人)とまだまだ受診率は低いが、腎疾患では10%(受診患者数130万人/推定患者数1380万人)とさらに低いと推定されることを指摘した。

 4月から特定健診・保健指導が実施されているが、この特定健診は腹囲や血糖、脂質、血圧を検査項目とするメタボリックシンドロームを対象としたイベントの一次予防が主目的だ。ただし、特定健診では血清クレアチニンが必須検査項目ではなく、蛋白尿は受診勧奨の対象ではないことから、現時点では特定健診結果からCKDをスクリーニングするのは難しい。そのため、渡辺氏は「受診勧奨を受けて来院した患者は、まずは最低でも1年に1回は血清クレアチニン値を測定して腎機能を評価し、腎機能が低下していたら治療を開始、機能低下が大きければ専門医に紹介して欲しい」と訴えた。

 また、渡辺氏は、茨城県で実施された一般住民健診でeGFRが低下している人でメタボリックシンドロームと診断されなかった人が6割以上あったという結果を紹介し、今後、疫学研究や介入試験などでエビデンスを蓄積して特定健診に腎機能を評価する項目が盛り込まれるよう厚労省に働きかけていきたいと締めくくった。