抗癌剤治療中には、約6割の患者が味覚障害を経験していることが報告された。これは、昭和大学豊洲病院栄養科の鳥居美幸氏、内科の佐藤温氏らのグループによる研究で、3月20日〜21日に福岡市で開催された臨床腫瘍学会で発表された。

 鳥居氏らのグループは、同病院の内科もしくは外科で抗癌剤治療中の患者を対象に、味覚障害に関するアンケート調査を行った。回答者は58人(男性32人、女性26人、年齢30歳〜79歳)で、大半は消化器癌の患者であった。

 味覚障害は58人中36人に現れており、出現率は62%であった。味覚障害の主な症状は、「味がしない」(49%)、「塩分を感じにくい」(40%)、「苦みを感じる」(26%)などであった。味覚障害により食欲が低下したと回答した患者は49%だった。しかし、食べることがつらいので薬剤や点滴から栄養を補給したいと回答した患者は1人のみで、残りの患者は口から食べたいという意志を示していた。

 味覚の種類による食べやすさと食べにくさを回答してもらったところ、食べやすい味は、甘味(42%)、天然だし(42%)、マヨネーズ味(39%)、醤油味(36%)が多かった。一方、食べにくいとの回答が多かったのは、酸味(33%)、香辛料(31%)、カレー味(25%)などであった。ただし、カレー味は31%が食べやすいと回答しており、患者によって意見が分かれていた。

 また、食べやすいという患者の割合が高い甘味や天然だしでも、食べにくいと回答する患者は1割以上存在しており、食べやすい味、食べにくい味には、患者個人の嗜好が大きく影響する可能性が示唆された。

 加えて同グループは、食べやすい食品・食べにくい食品についても調査を行った。その結果、食べやすい食品は、麺類(69%)、果物(69%)、乳製品(56%)、ジュース・お茶(53%)、パン類・菓子類(50%)となっていた。逆に食べにくい食品との回答が多かったのは、肉類(33%)、ご飯類(31%)、種実類(25%)であった。

 魚介類に関しては、食べにくいとの回答は25%、食べやすいとの回答は31%となっており、患者によって意見が大きく分かれていた。

 今回の結果から、味覚障害のある患者においても、食事への意欲は高く、また、食べやすい食品も多々あることが明らかになった。ただし、同じ味覚障害を経験している患者でも、食べやすいものと食べにくいものの意見が分かれており個人差が大きい可能性も示唆する結果となった。今後同グループでは、この違いに何が影響しているのかを解析するため、患者の個別インタビューを計画している。