入院中に自殺した患者の3分の1以上が癌に罹患していたというデータがある。“死にたい”という癌患者に対して医師はどう対応すればよいのだろうか。その答えの一部を示す講演が3月20日〜21日に福岡市で開催された日本臨床腫瘍学会の教育セッションで示された。

 同教育セッションで「がん患者はなぜ死を望むのか?」と題した講演を行った名古屋市立大学医学部准教授の明智龍男氏は、これまでの国内外の研究成果を総括し、進行・終末期の癌患者において希死念慮が見られることは稀ではないと述べた。また、これまでの癌患者の自殺に関する統計から、男性は女性よりも自殺のリスクが高く(約2倍)、診断後1年以内の進行癌患者が最も自殺リスクが高いというデータを示した。また、自殺の最大の要因としてはうつ状態があるとした。これらのことから、明智氏は、進行癌の告知後の心理的援助は非常に重要と語った。

 また、患者の希死念慮の底には、身体的機能の低下や、痛み、うつ状態や家族への負担を気にするなど、様々な苦痛が複雑に絡み合っていると分析した。

 ただし明智氏は、「“死にたい”という癌患者のほとんどは、生きることに対する援助を求めている」と語り、今ある苦痛から逃れたいという気持ちから、希死念慮が生じていると分析した。

 希死念慮を持つ患者に対して医師がどのように対応すべきか。明智氏は、「オープンで非審判的なコミュニケーションが何よりも重要」という。オープンで非審判的なコミュニケーションとは、患者が“はい”、“いいえ”以外の言葉で答えられるような質問をし、患者の回答に寄り添うような姿勢を示すこと。

 具体例として明智氏は、実際にあった患者との対話の一例を披露した。


患者:「もう死にたい、、、」

医師:「きっと、つらいことや心配がおありなのでしょうね。もう少しお話いただけますか?」(これがオープンな質問)

患者:「これからのことをいろいろ考えてしまうんです。最近、不安で夜も眠れないんです」

医師:「これからのことが不安で、そんな気持ちになられるのですね」(苦痛を理解し寄り添う姿勢)

 また明智氏は、「うつ状態と思われる患者がいた場合、専門家に紹介して欲しい。ただし、紹介ができないような場合には、安易に睡眠導入剤や抗不安薬を使うのではなく、抗うつ剤を処方して欲しい」と訴えた。その理由として、「睡眠導入剤や抗不安薬は、効果がないことが多いばかりでなく、害を生じる危険性もあるため」と解説していた。