切除不能進行膵癌の標準療法であるゲムシタビン(GEM)に加え、S-1の普及で進行膵癌の予後改善が示唆された。3月20から福岡市内で開催された第6回日本臨床腫瘍学会学術集会で東京大学消化器内科の中井陽介氏によって発表された。

 解析の対象となったのは、同院にGEMが導入された2001年4月から2006年6月に化学療法を実施した切除不能進行膵癌患者103名。2005年2月以前に化学療法を開始した53人(S-1が普及する前の群、preS-1群)と2005年2月以降に化学療法を開始した50人(S-1が普及した後の群、postS-1群)についての比較、検討が行われた。PreS-1群はファーストラインでGEMを単独受けた53人で、支持療法(BSC)に移行したのは44人、セカンドラインとして、静脈投与5-FU系薬剤を利用した化学放射線療法を実施されたのが3人、静脈投与5-FUを受けたのが3人、S-1の投与を受けたのが3人で、セカンドライン導入率は17%で、GEMとS-1を使ったのは6%だった。

 一方、postS-1群はファーストラインとしてGEMの単独投与を受けたのは35人(1人は投与継続中)で、GEMとS-1の併用投与を受けたのが15人(2人は投与継続中)だった。GEMの単独投与を受けた35人のうち、BSCに移行したのは20人で、セカンドラインとして、静脈投与5-FU系薬剤を利用した化学放射線療法を実施されたのが1人、S-1を投与されたのが13人だった。GEMとS-1の併用投与を受けた15人のうちBSCに移行したのは8人でセカンドラインとしてGEMとオキサリプラチンの投与を受けたのは5人だった。postS-1群のセカンドライン導入率は40%で、GEM、S-1の2剤の投与を受けたのは57%だった。

 年齢の中央値はpreS-1群が65歳でpostS-1群が68歳。遠隔転移の有無は(無:有)21:32対16:34だった。

 preS-1群とpostS-1群の治療成績を比較すると、奏効率(RR)はpostS-1群が12%でpreS-1群は1.9%。疾患制御率(DCR)はpostS-1群が58%でpreS-1群は25%。無増悪生存期間(PFS)はpostS-1群の4.8カ月に対してpreS-1群は4.4カ月。全生存期間(OS)はpostS-1群が13.3カ月でpreS-1群が9.5カ月と、S-1の導入によって奏効率の上昇と生存率の延長が得られた。

 ファーストラインにおける治療成績の比較で、PFSはGEM単独群が4.4カ月でS-1との併用群が9.2か月(p=0.045)。OSは単独群が10.1カ月で併用群は18.4カ月。また、RRは単独群3.4%で併用群27%。DCRは単独群31%で併用群93%とGEM+S-1併用療法において高い抗腫瘍効果が認められた。

 一方、セカンドラインにS-1を投与した群でのRRは19%でDCRが50%。PFSの中央値は2.8カ月でOSの中央値が7.7カ月とセカンドラインとしての有効性が示された。発表者の中井氏は、「現在継続して行っているGEM単独とGEM+S-1併用の前向き試験でさらに検討を重ねたい」と述べている。