化学療法の適応ではないとされているPerformance status(PS)不良の非小細胞肺癌でも、EGFR遺伝子変異を持つ場合、ゲフィチニブが高い奏功を示すことが、北東日本ゲフィチニブ研究グループによる多施設共同フェーズII試験から確認された。宮城県立がんセンター呼吸器科主任医長の前門戸任氏らが、3月20日から福岡市で開催された第6回日本臨床腫瘍学会学術総会プレナリーセッションで発表した。

 分子生物学的マーカー(EGFR遺伝子変異)によってゲフィチニブを投与する患者を選択し、有用性を示した報告は国内外で初めて。現在の日本肺癌学会の「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」では、PS不良の非小細胞肺癌の場合は化学療法の適応ではないとされている。多くの患者はbest supportive care(BSC)が選択され、予後も3〜4カ月だ。

 試験対象は、ゲフィチニブに感受性があると予想されるEGFR変異(exon19deletions、L858R、L861Q、G719A、G719C、G719S)を持ち、非感受性のEGFR変異であるT790Mを持たない非小細胞肺癌患者。対象の選択には、同研究グループが開発した、簡便にEGFR遺伝子変異を検索できるPNA-LNA PCR clamp法を用いた。
 
 加えて、坦癌によるPS悪化(20〜75歳未満ではPS3以上、75歳以上ではPS2以上)で化学療法の適応にならず、予測予後が4カ月以下と推測される場合を条件とし、最終的に29人が対象となった。うち女性は22人、年齢中央値72歳(範囲50〜84)だった。29人のうち、腺癌は27人、病期犬27人、PS3〜4が22人だった。

 対象となった29人にゲフィチニブ250mg/dayを経口連日投与したところ、プライマリーエンドポイントである奏功率は62%(95%信頼区間 44−80%)、1年生存率は73%だった。また全生存期間の中央値は17.8カ月であり、無増悪生存期間の中央値は9.3カ月(同 5.2−11.0カ月)となった。PS3−4からPS1−2と、臨床的に意味あるPS改善をした人は22人中15人(PS改善率65%)だった。

 一方で、EGFR遺伝子変異があってもゲフィチニブが効かない人もおり、本試験でも2人は病状が進行してしまった。

 有害事象については、グレード2以下の軽微なものがほとんどだったが、1人はグレード4の肺炎を発症した。

 さらに、EGFR変異の有無による生命予後の差を比較すると、EGFR陰性だった31人の全生存期間の中央値は3.5カ月であり、陽性者でゲフィチニブを投与した群の17.8カ月と比べ、非常に低かった。

 前門戸氏は、「初回ゲフィチニブ療法はかつてないほど良好な成績を出した。PS不良の非小細胞肺癌でEGFR遺伝子変異が陽性の場合、ゲフィチニブの投与が勧められるだろう」と結論づけた。

 コメンテーターの北大大学院腫瘍内科学教授の秋田弘俊氏は、「本試験からは、ゲフィチニブによるPS改善効果は明らかだった。PSは予後因子であることから、ゲフィチニブ治療による予後改善、生存期間延長は明らかだろう。ただし、今後、今回のフェーズII試験の結果を基にフェーズIII試験を行うとなると、コントロール群がBSCになってしまうため、倫理的に難しいのかもしれない」と話した。