第6回日本臨床腫瘍学会学術集会が3月20日から22日までの3日間、福岡市で開催される。日本のがん医療の均てん化に向けて、専門医の養成、臨床腫瘍学研究の推進など、同学会に期待される役割は大きい。本学術集会の会長を務める原田実根氏に、学会の活動状況と学術集会の見所を聞いた。(聞き手は関本克宏)


国立病院機構大牟田病院院長(九州大学名誉教授)の原田実根氏

――今、「現実に癌の薬物療法を担うのは誰か」という議論が、癌に関係する学会の場で必ず出てきます。

原田 ご存じの通り、日本にはこれまで、癌治療専門医に相当するカテゴリーの医師は存在しませんでした。多くの癌は「外科医が見つけて、手術で治す」病気であると見られてきました。醒めた目で見ると、内科医は癌治療をなおざりにしてきたのです。その分を、外科医が担って下さっていた。

 しかし今は、優れた抗癌剤が数多く登場して、外科医が手術療法以外に行うには、癌化学療法は複雑化しています。だから薬物療法はその専門家に任せてほしいという気持ちがあります。

――しかし現場には、「任せろと言われても腫瘍内科医がいないのだから、どうしようもないじゃないか」という声があります。

原田 確かに、米国には約9000人の腫瘍内科専門医が存在するのに対して、本学会が認定する「がん薬物療法専門医」は2006年に初めて47人が合格し、現在ようやく200人に達したところです。

 米国では1971年に「全米がん法」が施行されてから、Medical Oncologyの分野が急速に進歩しました。それに比べると日本は20〜30年遅れています。日本臨床腫瘍学会の前身である日本臨床腫瘍研究会は20年前からありましたが、切除不能進行癌を治療する専門医を養成するという位置づけでした。それが、「癌の生物学的特性を理解した上で、癌の診断治療に熟練し、かつ緩和医療までを視野に入れたtotalな癌医療を目指す」日本臨床腫瘍学会となったのは6年前。まだ日が浅いのです。

 しかし、第1回学術集会が開催された時の会員数が600人だったのに対し、現在は6000人を越えています。今年中に7000人を突破するのではないでしょうか。日本臨床腫瘍学会としては、とにかく「がん薬物療法専門医」を増やしていくしかない。そして、徐々に任せて下さいという立場です。会員の中には外科医もいます。外科医と腫瘍内科医は反発しあっていると見られたこともありましたが、今は一緒にやろうという機運が出てきていると思います。

 また、昨年から始まった文部科学省の「がんプロフェッショナル養成プラン」、略称「がんプロ」の教育プログラムを終了すると、「がん薬物療法専門医」の受験に必要な要件を満たすことになります。その時、多くの若手専門医が生まれて来るのではないかと思います。

 さらに、日本に3000人以上いる血液内科医が「がん薬物療法専門医」に目を向けてくれれば、専門医の数はかなり増えるのではないかと考えています。多くの医学部で「血液・腫瘍内科」を標榜する科が増えていることからわかるように、血液の癌を診ている人は、全身の癌を診るトレーニングを積んでいるのです。今回の学術集会でも、日本血液学会との合同シンポジウムを企画しています。

――学術集会に関して、日本臨床腫瘍学会は、演題に対する厳しい相互批判を行うと聞いています。

原田 今回の学術集会には640題の応募がありましたが、評価が低いため採択されなかった演題が30題あります。5点満点で2点以下は全て落としました。一方、プレナリーセッションには、かなり議論を重ねましたが7題を選択しました。

 また、今回の新しい企画に、教育セッションと臨床腫瘍学演習があります。教育セッションは、従来から行われている教育セミナーが若手を対象としたminimum requirementなのに対して、advanced courseという位置づけです。臨床腫瘍学演習は、実際の症例をモデルにしたディカッション形式のレビューで、clinical problems in oncology sessionともいうべきものです。この2つが企画されたことは、学術集会参加者の全体的なレベルが上がってきていることの現れといってもよいでしょう。

 それから、会長シンポジウム「わが国のがん医療の現状と課題―がん対策基本法の意義」も目玉です。行政、患者会、マスコミといった各界の代表者と一緒に考えることで、法律を作ったことに満足せず、生かすための知恵が出ればと思っています。

――教育セッションの一番目に、「がん臨床研究の利益相反」があるのは、日本臨床腫瘍学会ならではと思いますが。

原田 これはとても大切なことです。今、新薬の開発がものすごい勢いで進んでいますから、ヘタをすると医師が飲み込まれてしまう。ここでは、日本臨床腫瘍学会が日本癌治療学会と共同で作成した「がん臨床研究の利益相反に関する指針」を説明してもらいます。

 それと最後に、懇親会を博多リバレインで行いますが、九州の有名な焼酎を手分けして持ち込みます。なかなか手に入らないものもあります。ぜひ飲みに来てください。