九州大学大学院医学研究院環境医学の福原正代氏

 健診血圧家庭血圧中心血圧の上昇はいずれも頸動脈硬化の進行と関連しているが、家庭血圧と頸動脈硬化の関連が最も強いことが、一般住民を対象とするわが国の代表的な前向き追跡研究である久山町研究の最新の解析結果から示された。この成績は、九州大学大学院医学研究院環境医学の福原正代氏が、10月26日まで大阪で開催されていた日本高血圧学会(JSH2013)で発表した。

 家庭血圧と頸動脈硬化の関連は、家庭血圧が1日分の値であっても、健診血圧や中心血圧との関連よりも強かった。家庭血圧の測定が動脈硬化性疾患の予防・管理において重要な位置を占めることが、大規模な観察データによって明確に裏づけられたと言える。

 近年、健診血圧に加え、家庭血圧と中心血圧が測定されることが増えているが、この3つの血圧値が動脈硬化に及ぼす影響を一般住民で比較した報告はほとんどない。このため、福原氏らは、久山町研究による断面調査の成績を用いて、この3つの血圧と頸動脈病変の関連について検討した。

 対象は、2007〜2008年の成人健診を受診した40歳以上の久山町住民のうち、朝の家庭血圧を3日以上測定し、中心血圧を測定し、かつ頸動脈エコー検査を受けた2835人とした。

 健診血圧は自動血圧計を用いて座位で3回測定した平均とし、中心血圧は座位で測定した。家庭血圧は朝に上腕型家庭血圧計を用いて座位で3回、28日間測定し、朝3回の測定値の平均をその日の代表値と定義し、すべての日の代表値の平均を解析に用いた。血圧分類には米国合同委員会第7次報告(JNC7)の血圧分類を用い、家庭血圧は各基準値から5mmHg引いたもので定義した。なお、解析には収縮期血圧のみを用いた。

 頸動脈病変は内膜中膜複合体厚(IMT)と狭窄の有無で評価した。総頸動脈長軸像で内頸静脈分岐部から心臓側2cmにわたる後壁IMTの平均を自動計測し、左右の平均値を平均IMTと定義した。最大IMTを短軸像で計測し、1.0mmを超える場合はIMT肥厚とした。径狭窄率30%以上を狭窄性病変ありとした。

 対象は平均63±12歳で内訳は男性1234人、女性1601人だった。収縮期血圧の平均は健診血圧131±19mmHg、中心血圧133±19mmHg、家庭血圧132±18mmHgだった。

 多変量調整後の平均IMTは、健診血圧、中心血圧、家庭血圧のいずれにおいても血圧レベルとともに上昇し、高血圧前症のレベルから、正常血圧に比較して平均IMTが有意に上昇した(いずれもP<0.05)。

 血圧測定方法と平均IMTの関連の強さの検討では、収縮期血圧の1標準偏差(SD)上昇ごとの平均IMT増加量は、健診血圧0.023mm、中心血圧0.019mm、家庭血圧28日分0.044mm、家庭血圧1日分0.039mmであり、健診血圧よりも家庭血圧28日分の方がIMT増加量は有意に大きく、家庭血圧1日分でも同様の結果だった(いずれもP<0.05)。

 多変量調整後の最大IMTは、健診血圧、中心血圧、家庭血圧のすべてで血圧レベルとともに上昇し、高血圧前症のレベルから、正常血圧に比較して最大IMTが有意に上昇した(いずれもP<0.05)。

 血圧測定方法と最大IMTの関連の強さの検討では、収縮期血圧1SD上昇ごとの最大IMT増加量は、健診血圧に比較して中心血圧ではIMT増加量が有意に小さかったが、健診血圧と家庭血圧の間には有意差を認めなかった。

 さらに、IMT肥厚(最大IMTが1mm超)のリスクを収縮期血圧レベル別に評価したところ、多変量調整後のIMT肥厚のオッズ比は、健診血圧、中心血圧、家庭血圧のいずれにおいても血圧レベルとともに上昇した。

 収縮期血圧1SD上昇ごとのIMT肥厚のオッズ比は、健診血圧に比べて、家庭血圧28日分ではIMT肥厚のオッズ比が有意に大きく、家庭血圧1日分だけで検討しても同様の結果だった。

 収縮期血圧1SD上昇ごとの頸動脈狭窄のオッズ比に関して、健診血圧、中心血圧、家庭血圧の間に有意差は認められなかった。

 以上の結果から福原氏は、「福岡県久山町における断面調査の成績では、健診血圧、中心血圧、家庭血圧いずれの血圧上昇も頸静脈硬化と関連していた。特に家庭血圧と頸動脈硬化との関連が強いことが示唆された」と結論した。