東北公済病院内科の山岸俊夫氏

 手術という強いストレスが想定される状況下では、交感神経活性の上昇と血圧の白衣現象は増長されやすいと考えられる。今回、東北公済病院(仙台市青葉区)内科の山岸俊夫氏が検討した結果によれば、周術期の血圧管理にはL/N型Ca拮抗薬のシルニジピンが有用であるという。検討内容と結果は、10月24日から26日まで大阪で開かれていた日本高血圧学会(JSH2013)で報告された。

 シルニジピンは、L型カルシウムチャネル阻害によって血管を拡張し、N型カルシウムチャネル阻害によって交感神経活性を抑制することで、降圧作用を示すことが知られている。山岸氏はこれまでに、同薬が血圧の白衣現象に対して有用であることを報告している。

 本検討の対象は、外来通院中で術前に高血圧(140/90mmHg以上)を指摘され、早朝家庭収縮期血圧が135mmHg以上、または同拡張期血圧が85mmHg以上の患者とした。これらの患者を、シルニジピン10〜20mg/日を投与する群(シルニジピン群、男性7例、女性23例、年齢61.2歳)あるいはニフェジピン20〜40mg/日を投与する群(ニフェジピン群、男性7例、女性8例、年齢65.7歳)に無作為に割り付け、少なくとも術前2週間前から投与を始めた。

 Ca拮抗薬の投与開始から手術までの日数は、シルニジピン群が23.9日、ニフェジピン群が20.8日、入院日数は11.8日、8.7日で、いずれも両群間に有意差はなかった。なお、薬剤平均投与量はそれぞれ17.3mg/日、30.0mg/日だった。

 シルニジピン群における血圧の推移を見ると、投与前の外来は154.9/89.7mmHg、入院日は131.3/77.6mmHg、周術期における最大値は145.4/79.8mmHg、退院日は126.9/76.0mmHgだった。収縮期、拡張期とも、入院日、周術期最大、退院日のいずれにおいても、投与前より有意に低かった(本検討における有意差はすべてP<0.05)。

 一方、ニフェジピン群の血圧の推移は順に160.3/89.0mmHg、138.2/76.9mmmHg、152.9/85.7mmHg、135.5/77.1mmHgで、周術期最大の拡張期血圧を除き、いずれも投与前より有意に低かった。

 また、投与前においては、収縮期、拡張期血圧とも両群間に有意差はなかった。しかし、収縮期は入院日、周術期最大、退院日のいずれにおいても、拡張期は周術期最大において、シルニジピン群の方が有意に低かった。

 心拍数の推移を見ると、シルニジピン群は順に82.8拍/分、79.5拍/分、79.5拍/分、76.3拍/分で、入院日と退院日は投与前より有意に低かった。一方、ニフェジピン群は順に85.3拍/分、86.5拍/分、89.7拍/分、83.8拍/分で、有意な変化は認められなかった。

 心拍数に関しても、投与前には両群間に有意差はなかったが、その後はいずれの時点でもシルニジピン群が有意に低かった。

 入院期間中の目標血圧値(140/90mmHg)の到達率を見ると、入院日はシルニジピン群が90%、ニフェジピン群が53%と、シルニジピン群で有意に高く、周術期最大はそれぞれ20%、13%、退院日は93%、80%と、ともにシルニジピン群の方が高い傾向にあった。

 早朝家庭血圧および心拍数については、投与前では両群間に有意差はなかったが、投与後はシルニジピン群の方が血圧は有意に低く、心拍数は有意に少なかった。

 以上の結果から山岸氏は、「手術というストレス下では、白衣現象はより増長されるだろう。術前の血圧コントロール不良例にN型カルシウムチャネル阻害作用を有するシルニジピンは有効で、周術期の血圧管理に有用と考えられる」と結論した。