京都薬科大学臨床薬理学分野の山本直輝氏

 高血圧自然発症ラット(SHR)に心筋梗塞(MI)を作製し、Ca拮抗薬のシルニジピンあるいはアムロジピンを投与したところ、MI後の左室リモデリング心不全の抑制効果はシルニジピンで高いことが示された。また、その理由として、N型カルシウムチャネル阻害を介した線維化抑制作用などが示唆された。京都薬科大学臨床薬理学分野の山本直輝氏らが、10月24日から26日まで大阪で開かれていた日本高血圧学会(JSH2013)で発表した。

 シルニジピンはL/N型Ca拮抗薬であり、アムロジピンなどのL型Ca拮抗薬と異なり、交感神経活性レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)を抑制することで腎保護作用を示すと報告されている。しかし、Ca拮抗薬による降圧治療が高血圧を伴う心筋梗塞後リモデリングに与える影響や、薬剤間の違いは明らかになっていない。そこで、MIを人為的に起こしたSHRを用いて、MI後の心臓リモデリングに対する効果を比較した。

 MIは、17週齢の雄性SHRの左冠動脈を30分間結紮し、再疎通することによって作製した。結紮を行わない擬似手術を施した群(sham群)、MIを作製した群(MI群)、MI作製術の1週間前よりシルニジピン10mg/kg/日を投与する群(シルニジピン群)、同じくアムロジピン10mg/kg/日を投与する群(アムロジピン群)の4群に分け、21週齢時に心機能評価や組織学的検討、遺伝子発現の検討などを行った。
 
 体重や心拍数は4群間で有意差を認めなかった。収縮期血圧は、MI群、シルニジピン群、アムロジピン群でsham群に比べ有意に低下し、さらにシルニジピン群とアムロジピン群ではMI群より有意に低下していた(本検討における有意差はすべてP<0.05)。

 心体重量比(心重量/体重)は、MI群、シルニジピン群、アムロジピン群のいずれもsham群と比べ有意に増加したが、シルニジピン群はMI群だけでなくアムロジピン群と比べても、その増加が有意に抑制されていた。左室体重量比(左室重量/体重)はMI群でsham群より有意に増加したが、シルニジピン群はMI群と比べ有意に低かった。

 MIを作製した3群はいずれもsham群に比べ、左室拡張末期径(LVEDd)は有意に増加した一方、左室内径短縮率(FS)は有意に減少した。どちらの指標でも、シルニジピン群ではMI群に比べ有意な改善が認められたものの、アムロジピン群では有意な変化はなく、さらに、シルニジピン群はアムロジピン群より有意に改善していた。

 血行動態を左室拡張末期圧(LVEDP)で評価すると、sham群に比べ他の3群はすべて有意に増加していたものの、シルニジピン群とアムロジピン群はMI群より有意に減少していた。また、左室収縮能の指標である左室陽性dp/dtは、MI作製の3群でsham群と比較し有意に減少していた。左室拡張能の指標であるtauについては、 MI群でsham群に対し有意に増加し、シルニジピン群でのみ、その増加が有意に抑制されていた。

 MIサイズに関しては、3群間に有意差はなかった。非梗塞部位の心筋細胞サイズは、MI群でsham群より有意に大きかったが、薬物投与によって有意に抑制されていた。非梗塞部位の間質線維化については、MI群でsham群と比較して有意に増加し、シルニジピン群とアムロジピン群でその増加が有意に抑えられていた。さらに、シルニジピン群はアムロジピン群より有意に少なかった。

 非梗塞部における各種のmRNA発現を見ると、BNPはMI群でsham群と比較して有意に増加したが、薬剤の投与によりいずれも有意に軽減していた。TGF-βはMI群、アムロジピン群でsham群に比べ有意に増加したが、シルニジピン群ではその増加を有意に抑制した。ACEもMI群、アムロジピン群でsham群に対する有意な増加が認められ、シルニジピン群はアムロジピン群に比べ有意に低かった。

 これらの結果を踏まえて山本氏らは、「シルニジピンはアムロジピンと比べ、心筋梗塞後左室リモデリングをより改善した。いずれの薬剤もL型カルシウムチャネル阻害によって心肥大を抑制する。一方、シルニジピンでのみ、N型カルシウムチャネル阻害を介した種々のmRNA発現抑制が線維化の抑制をもたらし、さらなる左室リモデリング改善効果が得られたのではないか」との見解を示した。