慶應義塾大腎臓内分泌代謝内科の伊藤裕氏

 来年4月に公開が予定されている「高血圧治療ガイドライン2014」(JSH2014)では、糖尿病合併高血圧患者の降圧目標が、従来通りの「130/80mmHg未満」に据え置かれることになりそうだ。10月26日、大阪で開催された第36回日本高血圧学会総会の特別企画「高血圧治療ガイドラインJSH2014概要」で、慶應義塾大腎臓内分泌代謝内科の伊藤裕氏が登壇し、作成中のJSH2014「糖尿病合併高血圧の治療指針」について説明した。

 糖尿病を合併した高血圧患者の血圧をどのレベルにまで下げるかについては、世界的に議論が続いている。欧米では、2010年に発表されたACCORD-BP試験(ACCORD Study Group. N Engl J Med. 2010; 362: 1575-85.)や、2011年に発表されたメタ解析(Bangalore S, et al. Circulation. 2011; 123: 2799-810.)で、厳格治療群と標準治療群の間で主要評価項目の発生率に有意な差が見られなかったことから、昨今、世界的に降圧目標を緩和する動きが広がっている(関連記事)。

 具体的には、米国糖尿病学会では今年、糖尿病合併高血圧患者の降圧目標を140/80mmHgに引き上げている。また欧州糖尿病学会も、糖尿病を合併しているかどうかを問わず、治療開始血圧と降圧目標を、ともに140mmHg(拡張期血圧)に引き上げた。

 こうした海外での動きをにらんで、日本でも糖尿病合併高血圧患者の降圧目標を緩和することが検討されたが、結果的にJSH2014においては「130/80mmHg未満」という厳格管理を維持する方針が提案されるに至った。その理由について伊藤氏は、「日本では、脳卒中の発生率が欧米に比べて1.5〜2倍高い。厳格に血圧を管理すれば、脳卒中予防が十分に期待できる」と講演の中で説明した。

 実際、前述のACCORD-BP試験やメタ解析でも、脳卒中の発生率は厳格管理群で有意に少なかったことが明らかになっている。「心筋梗塞に比して脳卒中の多い本邦においては、脳卒中よりも心筋梗塞の多い欧米とは異なり、エビデンスの解釈も脳卒中発症予防に重点をおくのは当然」(JSH2014原案より)というわけだ。

 ただし、糖尿病合併高血圧患者の中でも「動脈硬化性冠動脈疾患、末梢動脈閉塞疾患、頸動脈狭窄がある患者では、降圧による臓器灌流低下に対する十分な配慮が必要」(伊藤氏)。個々の病態に応じて、降圧目標を緩和するように求めている。

 なお、糖尿病合併高血圧例に使用する降圧薬については、インスリン抵抗性改善作用が認められることなどから、レニンアンジオテンシン系阻害薬が第一選択薬となる見込みだ。