富山大学第2内科の小池勤氏

 本態性高血圧患者にL/N型Ca拮抗薬シルニジピンを1年間投与したところ、血圧および脈拍数の低下に伴う血行動態の負荷軽減によって大血管の硬化を、また酸化ストレスの抑制によって細動脈の硬化糸球体の障害を、それぞれ改善している可能性が示された。富山大学第2内科の小池勤氏らが、10月26日まで大阪で開かれていた日本高血圧学会(JSH2013)で発表した。

 高血圧性臓器障害の発症には、血圧や脈拍などの血行動態の負荷とともに酸化ストレスが寄与することが知られている。シルニジピンは酸化ストレスの軽減作用を介した腎保護効果を有することが報告されているが、大血管や抵抗血管への効果については明らかではない。そこで小池氏らは、シルニジピンが血行動態や酸化ストレスに及ぼす影響と、血管や腎に対する保護作用との関係を検討した。

 検討対象は未治療の本態性高血圧患者11例(男性7例、女性4例)で、WHO重症度分類はI期あるいはII期だった。患者背景は、年齢が57歳、身長が162cm、体重が59kg、BMIが22.4、高血圧罹病期間が5.2年、高血圧の家族歴が82%、喫煙歴が45%。

 これらの患者にシルニジピン10〜20mg/日を1年間にわたり投与した結果、外来血圧は収縮期、拡張期とも有意に低下したが(いずれもP<0.01)、脈拍数は投与前後で有意差が認められなかった。一方、安静30分後の血圧は収縮期、拡張期とも有意に低下し、脈拍数も有意に減少した(順にP<0.05、P<0.01、P<0.05)。

 血液生化学検査に関しては、ヘマトクリットやクレアチニン、尿酸、電解質、脂質、糖代謝、高感度CRPなどで、投薬前後における有意な変化は認められなかった。さらに、血漿レニン活性、血漿アルドステロン濃度、エピネフリン、ノルエピネフリンはいずれも、投薬前と投薬後の間に有意差はなかった。

 酸化ストレスの指標である尿中8-OHdG濃度は有意に減少した(P<0.05)。大血管硬化の指標である特性弾性係数(stiffness index)βと心臓足首血管指数(CAVI)値はともに有意な減少が認められ、細動脈硬化の指標である前腕最小血管抵抗(MVR)、尿中アルブミン排泄量も有意に低下していた(すべてP<0.05)。

 次に、投薬前後におけるstiffness index βの変化量と安静時の収縮期血圧の変化量との関係を調べたところ、有意な正の相関が確認された(r=0.70、P<0.05)。また、stiffness index βの変化量は脈拍数の変化量とも有意な正の相関関係があったが(r=0.85、P<0.05)、尿中8-OHdGの変化量とは相関が認められなかった。

 CAVI値の変化量との関係を見たところ、stiffness index βと同じく、安静時の収縮期血圧の変化量および脈拍数の変化量との間には、有意な正の相関が認められた(順にr=0.50、P<0.05;r=0.66、P<0.05)。

 MVRの変化量に関しては、安静時の収縮期血圧や脈拍数の変化量では相関が認められず、尿中8-OHdG濃度の変化量とは有意な正の相関にあった(r=0.67、P<0.05)。尿中アルブミン排泄量の変化量もMVRと同じく、尿中8-OHdG濃度の変化量のみ、有意な正の相関が認められた(r=0.69、P<0.05)。

 以上の結果から小池氏は、「本態性高血圧患者において、シルニジピンの大血管硬化の改善には血行動態での負荷の低下が関連し、一方、細動脈硬化と糸球体障害の改善には酸化ストレスの軽減が寄与していることが示唆された」と述べた。