味の素製薬創薬研究所・東邦大学薬学部薬物治療学の原田英里氏

 Dahl Sラットを用いた心房細動(AF)誘発モデルにおいて、L/N型Ca拮抗薬シルニジピンおよびL型Ca拮抗薬アムロジピンはいずれもAF持続時間をほぼ半減させたことから、AF誘発性の改善に有効な可能性が示された。味の素製薬創薬研究所・東邦大学薬学部薬物治療学の原田英里氏らが、10月26日まで大阪で開かれていた日本高血圧学会(JSH2013)で発表した。

 AFの予防には、レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬がガイドラインで推奨されている一方、降圧そのものがAF予防に最も関与しているというエビデンスも近年報告されている。またこれまで、シルニジピンが交感神経活性レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系活性の亢進を抑え腎障害や心室のリモデリングを抑制することを、様々な高血圧モデルを用いて報告してきた。今回、原田氏らは、Dahl Sラットにおける心房のリモデリングおよびAF誘発性に対するシルニジピンとアムロジピンの作用を検討した。

 雄性7週齢Dahl Sラットに高食塩食を与え、13週齢時において、シルニジピン低用量群(5mg/kg、11匹)、シルニジピン高用量群(10mg/kg、11匹)、アムロジピン低用量群(1.5mg/kg、11匹)、アムロジピン高用量群(3mg/kg、12匹)、薬物非投与群(9匹)の5群に分け、各薬剤は5週間強制経口投与した。また、低食塩食を継続的に与える群を対照群(5匹)とした。

 血圧の推移を見ると、低用量群同士、高用量群同士はいずれも同程度の降圧作用を示した。心機能の指標である左室駆出率(EF)は、薬物非投与群では対照群に比べ有意に低下し、すなわち高食塩負荷により有意に低下したが(P<0.001)、シルニジピンおよびアムロジピンの高用量投与により有意な改善が認められた(順にP<0.001、P<0.05)。同様に左室内径短縮率(FS)でも、高食塩負荷により有意に低下したが(P<0.001)、両薬の高用量投与に伴い有意な改善が認められた(順にP<0.001、P<0.05)。また、心機能マーカーであるBNPは高食塩負荷により有意に上昇したが(P<0.05)、薬剤投与群ではいずれも有意に抑制していた(シルニジピン群はともにP<0.01、アムロジピン群はともにP<0.05)。

 心房線維化面積率については、高食塩負荷により有意に増加していたが(P<0.01)、アムロジピン低用量群を除き、薬物投与により有意に抑制された(シルニジピン低用量群はP<0.01、同高用量群はP<0.001、アムロジピン高用量群はP<0.05)。心室線維化面積率も高食塩負荷に伴い有意に増加したが(P<0.001)、薬物投与によりいずれの群においても有意な抑制が確認された(シルニジピン低用量群はP<0.01、同高用量群はP<0.001、アムロジピン低用量群と同高用量群はP<0.05)。

 18週齢において、麻酔下にて心房に電極カテーテルを挿入し、電気刺激を加えAFを誘発させた。電気刺激停止後のAF持続時間は、高食塩負荷によって有意に延長していた(P<0.01)。薬物投与群では薬物非投与群に比べ、有意差は認められなかったものの、いずれもほぼ半減していた。心房細動周期および心房不応期については、薬物投与による有意な変動はいずれも認められなかった。

 交感神経活性を血漿中ノルアドレナリン濃度で評価したところ、高食塩負荷により上昇傾向を認め(P=0.081)、シルニジピン高用量群はアムロジピン高用量群に比べ有意に低かった(P<0.05)。血漿中アドレナリン濃度は高食塩負荷で有意に高まったが(P<0.05)、薬剤投与に伴う有意な変化はいずれの群でも認められなかった。また、いずれの指標でも、シルニジピン投与群は用量によらず薬物非投与群より低かった一方、アムロジピン投与群はいずれの用量でも高かった。このように、高食塩負荷に伴う交感神経活性の亢進が観察されたが、両薬剤の作用は異なっていることが分かった。

 これらの結果を原田氏は、「Ca拮抗薬は食塩感受性高血圧により生じた心房のリモデリングを抑制し、心機能低下や心房細動誘発性を改善する可能性が示された。L/N型Ca拮抗薬シルニジピンの改善作用はL型Ca拮抗薬アムロジピンのそれと同等以上だった」とまとめた。また、交感神経活性亢進に対する作用が両薬で異なったことから、「臓器保護メカニズムには違いがある可能性もあるので、今後さらに検討したい」と語った。