京都大学内分泌代謝内科(腎臓内科)の横井秀基氏

 N型カルシウムチャネル(NCaC)の抑制は、糖尿病性腎症モデルにおいて腎保護的な作用を有する可能性が示唆された。これは、NCaCの主要サブユニットであるα1サブユニットをノックアウト(KO)した糖尿病マウスを用いた様々な検討結果から示された知見だ。京都大学内分泌代謝内科(腎臓内科)の横井秀基氏らが、10月26日まで大阪で開かれていた日本高血圧学会(JSH2013)で発表した。

 慢性腎疾患を有する高血圧患者を対象とした臨床試験において、L/N型Ca拮抗薬シルニジピンはL型Ca拮抗薬アムロジピンに比べ蛋白尿を改善したことから、NCaCの抑制は腎保護に働くのではないかと考えられている。一方、NCaC KOマウスでは、糖代謝の改善が認められることなどが既に報告されている。

 今回、横井氏らはdb(diabetes)遺伝子とNCaC遺伝子のダブル変異マウスを作製し、糖尿病性腎症におけるNCaCの腎における役割について検討した。今回用いたモデルマウスは、db/+ NCaC+/+(非糖尿病野生型[WT])マウス、db/+ NCaC+/−(非糖尿病ヘテロノックアウト[HKO])マウス、db/+ NCaC−/−(非糖尿病KO)マウス、db/db NCaC+/+(糖尿病WT)マウス、db/db NCaC+/−(糖尿病HKO)マウス、db/db NCaC−/−(糖尿病KO)マウスの6種類。8週齢より血圧、尿中アルブミン排泄、血糖を測定し、16週齢で屠殺した。

 ISH(in situ hybridization)による検討から、NCaCは糸球体内に発現しており、糖尿病マウスでは発現の増強が認められた。体重については、糖尿病、非糖尿病のどちらにおいても、WT、HKO、KOにかかわらず差はなかったが、腎重量については、糖尿病KOマウスが糖尿病WTマウスに比べ有意に軽かった(P<0.01)。

 血圧については、非糖尿、糖尿病のいずれでも、NCaCのKOによって収縮期血圧の低下が認められた。一方、血糖については、糖尿病マウスの3群はどれも高血糖だったが、糖尿病KOマウスは糖尿病WTマウスと比較して低値で、HbA1cも有意に低下していた(P<0.01)。

 腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)を行ったところ、糖尿病KOマウスでは糖尿病WTマウスに比べ血糖上昇の抑制と血中インスリン値上昇が認められた。また、インスリン負荷試験(ITT)を実施すると、糖尿病KOマウスの血糖値は糖尿病WTマウスのそれより有意に低く、NCaCのKOによってインスリン抵抗性が改善することが示された。

 尿中カテコラミンで交感神経活性を見ると、糖尿病KOマウスは糖尿病WTマウスと比較して尿中ノルアドレナリンと尿中アドレナリンが有意に減少していた(いずれもP<0.01)。

 尿中アルブミン排泄量を測定したところ、糖尿病WTマウスでは他の5群に比べ大幅な上昇が認められ、また糖尿病HKOマウスと糖尿病KOマウスは糖尿病WTマウスよりも約7割有意に低下していた(いずれもP<0.01)。クレアチニン・クリアランスは、糖尿病WTマウス、糖尿病HKOマウスで増加していたが、糖尿病KOマウスではこの増加が非糖尿病マウスと同程度のレベルにまで抑制されていた。

 組織学的検討では、糖尿病WTマウスでメサンギウム基質の増加が認められたものの、糖尿病KOマウスではこの増加が有意に抑制され、非糖尿病マウスと同程度だった。ポドサイト関連蛋白であるネフリンおよびポドシンの発現を免疫染色で調べたところ、糖尿病WTマウスではいずれも発現が低下していたが、糖尿病HKOマウスおよび糖尿病KOマウスではその発現低下が軽度で、非糖尿病WTマウスでの発現に近い程度に維持されていた。

 電子顕微鏡により糸球体基底膜を観察すると、糖尿病WTマウスでは肥厚が認められたが、糖尿病KOマウスではこれが有意に抑制されていた(P<0.01)。

 糸球体内のmRNAを解析したところ、糖尿病KOマウスでは糖尿病WTマウスに比べ線維化関連遺伝子の発現低下が認められた。また、糖尿病マウスで亢進が報告されている細胞内シグナルであるERKのリン酸化を調べたところ、糖尿病WTマウスで亢進が認められたが、糖尿病KOマウスではこの亢進が抑制されていた。

 今回の一連の結果を踏まえ横井氏は、「N型カルシウムチャネルの抑制は、糖尿病性腎症において腎保護的に作用する可能性が示唆された」と結論した。