手稲渓仁会病院の佐々木晴樹氏

 心筋梗塞後の血圧管理において、十分な降圧は心疾患発症予防に重要であるものの、過度な降圧は心疾患発症および全死亡を増大させる可能性があることが示された。急性心筋梗塞患者を対象に退院後5年間の外来血圧を指標として予後を検討した結果、明らかになった。手稲渓仁会病院の佐々木晴樹氏らが10月26日まで大阪で開催されていた日本高血圧学会(JSH2013)で発表した。

 対象は2002年から2008年までに、同病院へ搬送された急性心筋梗塞患者335人。男性が257人、女性が78人、平均年齢が64.3歳だった。退院後5年間の外来血圧の平均値によって、高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)が示す降圧目標値130/80mmHg未満を達成していた降圧目標達成群と未達成群に分けて、その予後を比較検討した。

 降圧目標達成群は144人、未達成群は191人だった。平均収縮期血圧は達成群が116±8.6mmHg、未達成群が141±12.7mmHg、平均拡張期血圧はそれぞれ68.8±6.2mmHg、79.5±9.4mmHgで、いずれも達成群の方が有意に低値だった(各P<0.01)。また年齢(達成群61.8±12.7、未達成群66.3±12.2、以下同)、女性の割合(19%、27%)、左室駆出率(EF;52.9±12、58.1±11.7)は達成群が有意に低く(P<0.01、P<0.05、P<0.01)、採血の心筋逸脱酵素の最大値(max CPX;3635.5、2523.3)は達成群が有意に高値だった(P<0.01)。喫煙者は達成群で有意に低値だった(P<0.01)。

 この2群間で予後を検討したところ以下の結果となった。

 心疾患死亡は達成群が3.5%、未達成群が2.1%で、有意差はなかったものの達成群の方が高値だった。また、全死亡も同様で、達成群が13.8%、未達成群が12.0%と、有意差はなかったものの達成群の方が高値だった。

 再梗塞、入院を必要とする心不全、全死亡の複合ポイントは、達成群が25.7%、未達成群が15.2%と、達成群が有意に高値だった(P<0.05)。入院を必要とする心不全をみると、達成群が15.3%、未達成群が8.4%で、達成群で有意に高率だった(P<0.05)。

 さらに、未達成群において、心疾患死亡群と非心疾患死亡群で比較したところ、収縮期血圧と拡張期血圧とも心疾患死亡群で有意に高値だった(それぞれP<0.01)。一方、達成群においては、全死亡群が非全死亡群に比べて、収縮期血圧、拡張期血圧ともに有意に低値だった(それぞれP<0.05)。つまり、未達成群においては心疾患死亡群で血圧が高く、達成群においては全死亡群で血圧が低いという結果だった。

 これらの結果から佐々木氏らは、「心筋梗塞後の血圧管理については、十分な降圧が心疾患発症予防には重要であることが示唆された」としつつ、同時に心疾患死亡におけるJカーブ現象は明らかにならなかったが、「過度な降圧が心疾患発症および全死亡を増大させる可能性も示唆された」と結論した。