愛媛大学大学院老年神経総合診療内科の伊賀瀬道也氏

 未破裂脳動脈瘤の拡大あるいは破裂には、高血圧が影響すると考えられているが、外来診察時における収縮期血圧の変動性が大きいことも、瘤拡大の独立したリスク因子になる可能性が示唆された。愛媛大学大学院老年神経総合診療内科の伊賀瀬道也氏らが、10月26日まで大阪で開催されていた日本高血圧学会(JSH2013)で報告したもの。クモ膜下出血の予防策で「将来的に、外来収縮期血圧の安定も考慮すべきではないか」と提言した。

 未破裂脳動脈瘤は一般人口の2〜5%に認められる。頻度は年齢とともに高くなり、70歳以上では10%前後にも及ぶ。高齢化が著しいわが国では、MRIの普及と相まって、診療の機会はますます増えていくものと見られている。

 未破裂脳動脈瘤患者には何らかの破裂予防策が必要となる。特に予防的手術を行わない場合には、喫煙、大量飲酒の禁止とともに、血圧の管理が重要と考えられている。高血圧は未破裂脳動脈瘤の拡大あるいは破裂のリスク因子になるとされる。破裂によるクモ膜下出血発症の相対リスクは2.8と報告されている。

 一方、血圧に関して近年、その変動性が重要視されるようになった。血圧変動性の指標には種々あるが、最近特に注目を浴びているのが、外来診察ごとの血圧の変動性(visit-to-visit variability ; VVV)だ。UK-TIA trial、ASCOT-BPLA trialなどの大規模臨床試験のデータ再解析により、収縮期血圧の変動性増大や外来通院中の最高血圧値が、平均血圧とは独立した予後予測因子になることが報告されている。脳卒中発症の予知因子になるとの報告もある。これらの知見は、脳心血管イベントの予防を目指した降圧治療で、血圧変動を抑制する働きのある降圧薬が有用となる可能性も示唆する。

 伊賀瀬氏らは今回、未破裂脳動脈瘤の拡大または破裂に関連する因子を明らかにする目的で、未破裂脳動脈瘤患者の経過を前向きに観察。観察中の瘤拡大・破裂の有無で、外来診察時の血圧変動性も含めた各種因子を比較検討した。また、瘤拡大のリスク因子を多変量ロジスティック回帰分析により検討した。

 対象は、2006年12月から2010年6月に本研究に登録された未破裂脳動脈瘤患者200例(男性58例、女性142例、平均年齢67.6歳)。経過を2年間観察し、この間に瘤が1mm以上拡大または破裂した患者を変化群、その他の患者を未変化群とした。診断は、time of flight(TOF)MRI撮影によるvolume rendering(VR)所見をもとに、2人の脳神経外科専門医が行った。経過観察中に外科的治療を行った場合やクモ膜下出血を発症した場合は、その時点で観察を中止した。VVVは、最低5回の外来受診時の血圧値を平均し、その標準偏差と定義した。

 未破裂脳動脈瘤は200例で計212個認められ、うち径7mm以上の瘤は18個(8%)であった。高血圧は123例(62%)、糖尿病は21例(11%)、脂質異常症は56例(28%)、喫煙習慣は14例(7%)で認められた。

 2年間の観察期間中に、20例(10%)で瘤の拡大、1例(0.5%)で破裂によるクモ膜下出血発症が認められた。これら変化群の背景を未変化群と比べると、年齢、性別、BMIや高血圧、糖尿病、脂質異常症の割合には有意差がなかったが、喫煙習慣は33%で認められ、4%の未変化群よりも有意に高率だった。変化群ではさらに、未破裂脳動脈瘤の多発例が24%見られ、未変化群の4%に比べて有意に高率だった。瘤径の平均は、変化群4.6mm、未変化群3.1mmで、変化群で有意に大きかった。径7mm以上の瘤の割合も変化群33%、未変化群6%で、変化群で有意に高かった。

 両群の外来診察時血圧値は、収縮期、拡張期とも、変化群でやや高い傾向が見られたが、有意差はなかった。脈拍数も同様だった。血圧のVVVは、拡張期では変化群7.7mmHg、未変化群6.8mmHgで有意差がなかった。脈拍のVVVも有意差はなかった。しかし、収縮期血圧のVVVは、変化群11.7mmHg、未変化群6.7mmHgで、変化群において有意に大きかった。

 瘤拡大のリスク因子について、多変量ロジスティック回帰分析を行うと、これまでにも指摘されている喫煙、未破裂脳動脈瘤多発、瘤径、径7mm以上の瘤に加え、収縮期血圧のVVVが有意な独立したリスク因子になることが分かった。

 以上の成績から、伊賀瀬氏は「外来受診時ごとの収縮期血圧の変動が大きいことは、未破裂脳動脈瘤拡大の独立したリスクである」と結論。クモ膜下出血の予防においては「将来的に、外来収縮期血圧の安定も考慮すべきではないか」と指摘した。