国立病院機構九州医療センター高血圧内科の亀田和花子氏

 高血圧患者への減塩指導に際しては、個人の食塩摂取量を評価することが重要だ。しかし、日常診療で手間のかかる食事内容評価や24時間蓄尿によるNa排泄量評価を定期的に行うのは無理がある。国立病院機構九州医療センター高血圧内科の亀田和花子氏、𡈽橋卓也氏らは、同科で作成した簡易食事調査票「塩分チェックシート」を用いた評価は簡便であり、これに随時尿による食塩排泄量評価を併用することにより、より具体的な減塩指導が可能になることを、10月24日から大阪で開催中の日本高血圧学会(JSH2013)で報告した。

 2010年の国民健康・栄養調査によると、日本人成人の食塩摂取量は平均10.6g/日(男性11.4g/日、女性9.8g/日)。厚生労働省「日本人の食事摂取基準」2010年版で提唱された男性9g/日未満、女性7.5g/日未満を達成できているのは男女とも3割程度でしかない。

 高血圧患者では、減塩指導が最も重要な生活指導とされているが、なかなかはかどらない場合が多い。𡈽橋氏らは、高血圧外来の受診患者に1998年より行っている24時間家庭蓄尿による食塩排泄量の推移を調べた。すると、2011年は平均8.6g/日で、1998年に比べると1g以上減少していた。ところが、「高血圧治療ガイドライン2009」で示された減塩目標値6g/日未満の達成率は、2011年でも約20%に留まった。減塩指導を早くから積極的に行ってきた𡈽橋氏らの施設でも、良好な達成率を得るのは容易ではないようだ。

 減塩指導が難しい理由の1つは、減塩指導の基本データとなる食塩摂取量を日常診療で簡単に、しかも信頼性高く評価する方法がないことだろう。食塩摂取量の評価法は、食事内容の評価と尿Na排泄量測定による評価に分けられ、それぞれさまざまな評価法があるが、信頼性の高い方法は簡便性に欠ける。

 そこで亀田氏らは、簡単な質問で構成される「塩分チェックシート」を作成。その評価と随時尿による食塩排泄量評価を併用する方法を試みている。今回、そのデータをまとめた。

 対象は、九州医療センター高血圧内科に通院中で、降圧薬を服用している高血圧患者258例(男性123例、女性135例、平均年齢66.3歳)。BMIは平均24.9kg/m2、診察室血圧、家庭血圧は、いずれも平均で130/75mmHg前後だった。

 外来診察時に塩分チェックシートで塩分摂取量を評価するとともに、随時尿を用いた推定1日食塩排泄量(INTERSALTの推定式を利用)評価や血液生化学検査を行った。

 塩分チェックシートは、次の13項目の質問により成る。「みそ汁、スープなど」「漬け物、梅干しなど」「ちくわ、かまぼこなどの練り製品」「あじの開き、みりん干しなど」「ハムやソーセージ」「うどん、ラーメンなど」「せんべい、おかき、ポテトチップスなど」といった塩分の多い7グループの各食品を食べる頻度、しょうゆやソースをかける頻度、うどん、ラーメンなどの汁を飲むか、昼食での外食やコンビニ弁当などの利用頻度、夕食での外食や総菜などの利用頻度、家庭での味付け、食事量で、それぞれ0〜3点の4段階で評価する。13項目の合計点が、14〜19点の場合は「食塩摂取量は多め。減塩の工夫が必要」、20点以上の場合は「かなり多い。基本的な食生活の見直しが必要」などという評価結果が出る。

 塩分チェックシートの平均点数は、男性12.3点、女性9.4点と、男性で高かった。随時尿による推定食塩排泄量の平均は、男性9.2g/日、女性8.7g/日と、やはり男性で多かった。6g/日未満の達成率は、男性7.3%、女性14.1%と、男性で低かった。

 肥満群、非肥満群で分けて調べると、肥満群では塩分チェックシート点数が有意に高く、推定食塩排泄量は有意に多かった。血圧140/90mmHg未満を達成している群と達成していない群で比べると、未達成群の塩分チェックシート点数、推定食塩排泄量はともに達成群より多い傾向が認められた。

 さらに、各症例の塩分チェックシート点数と推定食塩排泄量をプロットすると、両値とも多い高食塩群は28%、逆に両値とも少ない低食塩群は30%認められた。この高食塩群と低食塩群と比較すると、高食塩群では男性、肥満、糖尿病が多く、かつ使用降圧薬数が多いにもかかわらず降圧目標達成率が低かった。

 高食塩群と低食塩群のチェックシートの回答を比較すると、高食塩群では「ちくわ、かまぼこなど」あるいは「ハムやソーセージ」を週2〜3回以上食べる頻度が50%前後で、低食塩群より明らかに高かった。また、高食塩群では、しょうゆやソースをかける頻度が「毎日1回はかける」は28%、「うどん、ラーメンの汁を半分くらい飲む」「すべて飲む」はそれぞれ43%、11%で、いずれも低食塩群より明らかに高率だった。

 以上より、亀田氏は「簡易食事調査票を用いた食塩摂取量の評価は簡便であり、随時尿による食塩排泄量の評価と併用することにより、日常診療における高血圧患者の減塩指導をより具体的に実施できる」と結論した。