群馬大学腎臓リウマチ内科の前嶋明人氏

 N型Ca2+チャネル(Cav2.2)は主に脳や脊髄、自律神経などの神経系細胞に分布し、神経伝達物質の放出に必要なCa2+イオンの供給を担っているとされる。腎臓では糸球体の輸入・輸出細動脈に存在する交感神経終末に分布し、細動脈の収縮や拡張に関与していると考えられている。そのCav2.2が、腎線維化治療における有力な標的分子になり得ることが報告された。群馬大学腎臓リウマチ内科の前嶋明人氏らが、10月24日から大阪で開かれている日本高血圧学会(JSH2013)で発表した。

 慢性腎臓病(CKD)患者で交感神経活性が上昇していることは20年くらい前から明らかになっているが、最近、交感神経終末にあるCav2.2が血管拡張のみならず、様々な腎障害に関与していることが示されている。また、前嶋氏らはこれまでに、片側尿管結紮(UUO)腎線維化モデルラットの腎臓ではCav2.2の発現が亢進していることや、このモデルラットにL/N型Ca拮抗薬シルニジピンを投与すると腎線維化が軽減することを報告している。そこで今回は、腎線維化におけるCav2.2の役割を検討した。

 雄性8週齢の正常(C57BL/6N)マウスにUUOを行うと、7〜14日で腎線維化が引き起こされる。そうしたUUOモデルマウスにおけるCav2.2の発現量は、正常マウスに比べ有意に増加していた(P<0.05)。炎症も惹起されるものの、Cav2.2はTリンパ球やマクロファージのマーカーとの共発現は認められず、間質の筋線維芽細胞のマーカーであるalpha-SMA陽性細胞に発現していることが分かった。

 さらに、雄性8週齢の野生型(WT)マウスと雄性8週齢のCav2.2ノックアウト(KO)マウスに対してUUOを行い、様々な指標で比較した。

 その結果、体重、腎重量、脈拍、平均血圧、腎機能(BUN、クレアチニン)に関しては、WTマウスとKOマウスの間に有意な差を認めなかった。また、細胞増殖の程度も差がなかった。

 一方、腎線維化面積はUUO後にWTマウス、KOマウスのいずれでも増加したが、KOマウスの方が増加量は少なく、両マウス間に有意差が認められた(P<0.001)。また、alpha-SMAの発現を見ると、いずれのマウスでもUUO後に増えたが、KOマウスはWTマウスに比べ増加量が有意に軽減されていた(P<0.05)。

 UUO後の細胞外基質の産生については、I型コラーゲン、III型コラーゲンで見ると両マウス間に差はなかったが、フィブロネクチンはKOマウスの方が有意に少なかった(P<0.05)。低酸素領域の面積はUUO後にいずれのマウスでも増大していたが、KOマウスではWTマウスに比べ有意に抑制されていた(P<0.05)。

 これらの結果から、腎線維化の過程においてCav2.2発現が亢進するものの、Cav2.2 KOマウスでは、UUO後の腎線維化が軽減されることが示された。前嶋氏は、「腎障害には、レニン・アンジオテンシン(RA)系だけでなく、交感神経活性化もおそらく関与している。現時点では直接的なエビデンスはないものの、Cav2.2も何らかの原因で活性化し、腎障害の一因になっていると考えられる。従って、Cav2.2は腎線維化治療の有力な標的分子の1つになり得る」との見解を示し、現在さらなる解析を進めているという。