大阪大学老年・腎臓内科学講師の杉本研氏

 2型糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬のリラグルチドは、尿中Na排泄促進作用などにより、高血圧を合併した糖尿病患者の血圧を低下させることが示された。大阪大学老年・腎臓内科学講師の杉本研氏らが、10月24日から大阪で開かれている日本高血圧学会(JSH2013)で発表した。

 GLP-1受容体作動薬は、インスリン分泌促進による血糖降下作用や、食欲抑制による体重の維持・低下作用を有する。また、尿中Naの排泄を促進することで降圧作用を示すとも指摘されているが、実臨床における報告は少ない。そこで杉本氏らは、リラグルチドの投与が尿中Na排泄や血圧に及ぼす影響を検討した。

 対象は、リラグルチド導入のため阪大医学部付属病院の老年・高血圧内科に入院した2型糖尿病患者の連続10症例。年齢は66.9±11.7歳、性別は男性40%、糖尿病罹病期間は18.2±8.8年、高血圧の合併は70%だった。入院前には40%がSU薬を、50%がDPP-4阻害薬を投与されており、90%がインスリン治療を受けていた。高血圧合併患者の降圧薬は、入院期間中に変更しなかった。

 入院して糖毒性を解除した後、1週目に0.3mg/日のリラグルチドを投与、2週目から0.6mg/日または0.9mg/日に増量した。そして、3週から4週を経た退院時とリラグルチド導入前の身長、体重、空腹時血糖値、HbA1c値、Cペプチド、血圧(3日間の早朝血圧の平均)、尿中のNa、Cr、アルブミン、蛋白を比較した。入院中、患者はNa制限ありの糖尿病食を摂取した。

 その結果、患者のBMIは28.1±3.81kg/m2から27.0±3.73kg/m2へ、HbA1c(NGSP値)は8.70±1.54%から7.50±1.13%へと、ともに有意に減少した(P<0.001)。尿中Na排泄量(随時尿による推定値)は、全体で135.7±13.7mEq/日から155.2±30.7mEq/日へ、高血圧合併患者で138.3±12.2mEq/日から161.9±24.7mEq/日へと、ともに有意に増加しており(P<0.05)、高血圧合併患者での増加が顕著だった。

 また血圧は、全体の収縮期血圧が125.8±12.7mmHgから126.3±11.4mmHgと変化しなかったものの、拡張期血圧は70.1±7.6mmHgから75.1±7.6mmHgへと有意に上昇していた。これに対し高血圧合併患者では、収縮期血圧が130.9±15.0mmHgから124.0±11.5mmHgへと、有意ではないが低下する傾向が見られた(P=0.06)。ただし拡張期血圧は、72.9±9.7mmHgが72.9±6.7mmHgと変化していなかった。

 上記の尿中Na排泄促進作用の機序について杉本氏は、腎近位尿細管におけるNa+/H+交換輸送体(NHE3)を介したNa再吸収の抑制というGLP-1受容体依存的な要素の他に、血管内皮におけるNO/cGMP系を介した血管拡張や、AII誘導性食塩感受性の抑制なども関与している可能性を指摘。「どれか一つではなく、幾つかの機序によって尿中Naの排泄が促進されているのではないか」と考察した。また今後の研究計画については、「今回紹介できなかった他のパラメーターによる解析を進めるとともに、症例を倍の20例くらいに増やしたい」と語った。