東北労災病院高血圧内科の金野敏氏

 高血圧は微量アルブミン尿新規発生のリスク因子とされるが、正常高値血圧(拡張期)もリスク因子になることが、正常アルブミン尿の一般住民約2600人を3年間追跡した検討から明らかとなった。東北労災病院高血圧内科の金野敏氏らが、10月24日に大阪で開幕した第36回日本高血圧学会(JSH2013)で報告した。

 微量アルブミン尿は、腎糸球体病変だけでなく、全身の血管内皮障害を反映する指標と考えられている。微量アルブミン尿の改善に伴って、腎あるいは心血管イベントのリスクが低下するというデータも報告されている。

 微量アルブミン尿の発生には、高血圧や糖尿病が影響することが指摘されている。高血圧は持続的に糸球体内圧を上昇させるため、糸球体内皮が損傷して、尿中にアルブミンなどの蛋白が漏出してくる。しかし、高血圧に至る前の正常高値血圧が微量アルブミン尿の発生に影響するか否かについては明らかではなかった。

 そこで金野氏らは、宮城県亘理町の一般住民を対象としたコホート研究「亘理町研究」で、正常高値血圧が微量アルブミン尿新規発生のリスクになるかを検討した。亘理町研究に参加した住民で、2008年に特定健診を受診した2603人のうち、随時尿による尿中アルブミン排泄量が30mg/gCr未満の正常アルブミン尿を示した2338人を3年間追跡した。

 ベースラインの血圧を高血圧治療ガイドラインに従って、至適血圧(120/80mmHg未満)、正常血圧(120〜129/80〜84mmHg)、正常高値血圧(130〜139/85〜89mmHg)、高血圧(140/90mmHg以上)の4カテゴリーに分類。血圧カテゴリーと追跡期間中の微量アルブミン尿(30〜299mg/gCr)新規発生との関連を多変量Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。

 平均2.4年間の追跡期間中に、微量アルブミン尿の新規発生は161人(6.9%)で認められた。微量アルブミン尿発生群は、非発生群に比べ、年齢、女性の割合、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、中性脂肪、血糖などが有意に高かった。また、メタボリックシンドローム、高血圧症、糖尿病を有する割合も有意に高率だった。

 ベースラインの血圧カテゴリー別に微量アルブミン尿新規発生率を検討すると、収縮期血圧においては、140mmHg以上の高血圧カテゴリーだけが有意に高い微量アルブミン尿発生率を示した。一方、拡張期血圧においては、90mmHg以上の高血圧カテゴリーだけでなく、85〜89mmHgの正常高値血圧カテゴリーでも微量アルブミン尿発生率が有意に高かった。

 微量アルブミン尿新規発生を目的変数として、多変量Cox比例ハザードモデルを用いた解析を行うと、血圧(収縮期、拡張期)に加え、中性脂肪(Log変換)、空腹時血糖(Log変換)が有意な因子として抽出された。

 ベースラインの血圧カテゴリーごとに微量アルブミン尿新規発生リスク因子を解析すると、年齢、性で調整したモデル、さらに中性脂肪(Log変換)、空腹時血糖(Log変換)でも調整したモデルのいずれにおいても、収縮期血圧では高血圧カテゴリーだけが有意なリスク因子だった。これに対して、拡張期血圧では2モデルとも、高血圧カテゴリーのみならず、正常高値血圧カテゴリーも有意なリスク因子になることが示された。

 さらに、ベースラインの尿中アルブミン排泄量(Log変換)を加えて多変量解析すると、中性脂肪、空腹時血糖、血圧はいずれも有意な因子ではなくなり、尿中アルブミン排泄量だけが有意な予測因子となった。

 以上より、金野氏は「一般住民において、正常高値拡張期血圧は微量アルブミン尿の新規発症リスクになることが示唆された」と結論。メカニズムについては「正常高値拡張期血圧が単独または、高中性脂肪血症、高血糖と相まって糸球体内皮を障害し、微量アルブミン尿発症につながるのではないか」と考察した。

 現在、特定健診の結果に基づいて保健指導が行われているが、金野氏は今回の結果を踏まえ「肥満がない人についても、正常高値拡張期血圧を認めた場合は、積極的に生活習慣の改善などに関与していくことが望ましい」と指摘した。