名古屋大学病態解析学講座の高橋圭司氏

 Dahl食塩感受性(DS)ラットにおいて、L/N型Ca拮抗薬のシルニジピンはL型Ca拮抗薬のアムロジピンに比べ左室肥大抑制効果は同等であったが、左室の線維化拡張障害求心性の改善効果は優れていることを、名古屋大学病態解析学講座の研究グループは既に報告している。一方、実臨床ではアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)にCa拮抗薬が併用されることが多い。今回、同研究グループの高橋圭司氏らは、ARBとの併用時における両Ca拮抗薬の心保護効果を比較した結果、シルニジピン併用の方が左室線維化および拡張障害の改善において良好であったことを、9月22日まで名古屋で開催されていた日本高血圧学会(JSH2012)で発表した。

 本検討では雄性DSラット42匹を用い、以下の5群に分けて検討した。具体的には、(1)正食塩飼料(食塩0.3%含有)を投与する群(対照群、6匹)、(2)生後6週齢より高食塩飼料(食塩8%含有)を投与し高血圧と左室肥大(LVH)を誘導する群(LVH群、6匹)、(3)LVHが誘導されたDSラットに生後7週齢から11週齢までARBのバルサルタン(10mg/kg/日)を投与する群(Val群、10匹)、(4)LVH誘導DSラットに対し7〜11週齢にバルサルタンとアムロジピン(1mg/kg/日)を併用投与する群(Val+Aml群、10匹)、(5)同じくバルサルタンとシルニジピン(1mg/kg/日)を併用投与する群(Val+Cil群、10匹)。なお、アムロジピンとシルニジピンの投与量は同等の降圧効果を示すように設定した。

 収縮期血圧の変化を見ると、LVH群では高食塩飼料の投与後より血圧が上昇し、対照群より有意に高かった。一方、Val群、Val+Aml群、Val+Cil群はいずれもLVH群より有意に低く、Val+Aml群とVal+Cil群の降圧は同程度であり、Val群より低かった。

 左室肥大の指標として、左室重量(脛骨長比)と左室重量/右室重量比を評価したところ、Val群、Val+Aml群、Val+Cil群はいずれもLVH群より有意に低く、Val+Aml群とVal+Cil群は左室肥大を同等に抑制していた。

 左室拡張障害の各指標を見ると、左室心筋重量、相対的壁厚、E波減速時間は、Val群、Val+Aml群、Val+Cil群のいずれもLVH群より有意に低かった。また、左室弛緩時定数TauはVal+Aml群とVal+Cil群でLVH群より有意に小さかった。このうち、E波減速時間とTauについては、Val+Aml群はVal+Cil群より小さい傾向が認められ(順にP=0.077、P=0.075)、TauについてはVal+Cil群のみVal群より有意に小さかった。また、等容弛緩時間はVal+Cil群のみLVH群より有意に低値だった。したがって、左室拡張障害の改善効果はVal+Cil群の方がVal+Aml群より優れていた。

 左室心筋細胞肥大に関しては、Val+Aml群とVal+Cil群は同等に抑制していた。また、左室の冠血管周囲、心筋間質の線維化に関しては、Val+Cil群の方がVal+Aml群より改善効果が優れていた。

 尿中カテコラミンを測定したところ、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンのいずれにおいてもLVH群に対し有意に改善していたのは、Val+Cil群だけであった。

 以上の結果から高橋氏は、「Val+Cil群とVal+Aml群は、降圧効果と左室肥大抑制効果では同等であったが、左室の線維化および拡張障害の改善においては前者が優れていた」とまとめた。効果に差が生じた理由として、シルニジピンがN型Caチャネル遮断による交感神経活性の抑制作用を持つことに加え、アムロジピンよりも強い抗酸化作用があることが考えられると語った。

(日経メディカル別冊編集)