東邦大学糖尿病・代謝・内分泌科の上芝元氏

 肥満を伴う高血圧患者にL/N型Ca拮抗薬であるシルニジピンを投与したところ、空腹時血中インスリン値(F-IRI)やインスリン抵抗性の指標であるHOMA-Rが有意に低下することが分かった。さらに、抗動脈硬化、抗肥満、抗糖尿病などの作用があり血中インスリンとは負の相関を示すとされる、副腎アンドロゲンの1つであるデヒドロエピアンドロステロンDHEA)が有意に増えたことも分かった。東邦大学糖尿病・代謝・内分泌科の上芝元氏らの研究成果で、9月22日まで名古屋で開催されていた日本高血圧学会(JSH2012)で発表された。

 肥満による高血圧の発症機序として、インスリン抵抗性による高インスリン血症、腎交感神経活動の亢進などが挙げられている。また、長時間作用型Ca拮抗薬は降圧作用だけでなく、インスリン抵抗性改善作用があるとの報告がある。

 本検討では、HbA1c(JDS値)6.5%未満で明らかな糖尿病の合併がなく、未治療もしくはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)投与にもかかわらず血圧コントロールが不良な肥満高血圧患者(140/90mmHg以上)15例を対象とした。患者背景は、男性8例、平均年齢51.5±8.7歳、平均BMIは28.3±1.8kg/m2で、未治療が10例、ARBによる治療中が5例だった。

 これらの患者にシルニジピン10mgを投与し、投与前と投与後(3〜6カ月後)で、BMIや血圧、心拍数、種々の糖代謝パラメーターの変化とともに、DHEAサルフェート(DHEA-S)や副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、コルチゾール、アディポネクチンの変化を比較した。

 その結果、シルニジピン投与により、血圧は149±6/85±8mmHgから138±6/78±7mmHgへ、心拍数は84±7回/分から78±3回/分へと、いずれも有意に低下した(ともにP<0.01)。

 糖代謝パラメーターに関しては、空腹時血糖値やHbA1cでは有意な変化は認められなかった。しかし、F-IRIは13.1±3.1μIU/mLから9.9±2.2μIU/mLへ、HOMA-Rも3.11±0.79から2.34±0.51へ、いずれも有意に低下した(ともにP<0.05)。また、血中アディポネクチン値は5.3±0.9μg/mLから8.7±1.1μg/mLへ有意に増加した(P<0.05)。

 副腎皮質ホルモンについては、血中DHEA-Sは37.0±8.5μg/dLから56.5±11.9μg/dLへと有意に増加していた(P<0.05)。しかし、ACTHやコルチゾールでは有意な変化が認められなかった。

 以上から、肥満高血圧症患者に対するシルニジピン投与は、降圧と心拍数低下をもたらすのみならず、インスリン抵抗性を改善し、血中DHEA-S濃度を増加させることが分かった。その機序に関して上芝氏は、同薬のN型Caチャネル遮断を介した交感神経活性抑制作用が関与しているではないかと推測し、「シルニジピンは肥満高血圧症に対する有効な治療薬の1つと考えられる」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)