横浜市立大学循環器・腎臓内科学の金岡知彦氏

 糖尿病を合併している、あるいは軽度以上の蛋白尿(0.15g/gCr以上)を呈する慢性腎臓病(CKD)患者に対する降圧治療では、レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬が第1選択薬だが、降圧不十分例にはCa拮抗薬あるいは利尿薬の併用が推奨されている。Ca拮抗薬には遮断するCaチャネルの違いからサブタイプがあり、N型Caチャネル遮断作用も有するCa拮抗薬に対しては、交感神経活性の抑制を介した腎保護、心血管障害抑制作用が期待されている。今回、横浜市立大学循環器・腎臓内科学の金岡知彦氏らは、CKDと高血圧を合併している患者で投与中のCa拮抗薬をL/N型Ca拮抗薬のシルニジピンに切り替えると、24時間自由行動下血圧測定(ABPM)で評価した心拍数や血圧短期変動性が有意に低下し、心肥大が抑制されることを、9月22日まで名古屋で開催されていた日本高血圧学会(JSH2012)で発表した。

 対象は、外来通院中のCKD患者のうち推算糸球体濾過量(eGFR)が60mL/min/1.73m2未満のステージ3〜5(透析例は除く)で、降圧薬としてRA系阻害薬およびシルニジピン以外のCa拮抗薬がすでに投与されている45例。これらの患者に投与中のCa拮抗薬を、シルニジピンに変更する群(シルニジピン群、22例)あるいは投与中のCa拮抗薬をそのまま継続投与する群(継続群、23例)にランダムに割り付け、試験開始時と6カ月後にABPMを行うとともに、腎機能や心機能を測定した。

 診察室の血圧および心拍数に関しては、両群とも開始時と6カ月後の間に有意差はなかった。また、変化量(=6カ月後の値−開始時の値)で見ても、群間差は認められなかった。

 一方、ABPMによる24時間心拍数の変化量はシルニジピン群が−5回/分、継続群が3回/分で、有意な群間差が認められた(P<0.05)。昼間心拍数の変化量は順に−4回/分、3回/分、変動係数(CV)で評価した収縮期血圧の短期変動性は順に−1.0%、1.1%と、有意な差が見られた(いずれもP<0.05)。また、交感神経活性の指標である24時間LF/HF比の変化量は、シルニジピン群が−0.1、継続群が0.2で、両群間に有意差が認められた(P<0.05)。すなわち、いずれの指標もシルニジピン群で改善が認められた。

 心エコーで評価した左室心筋重量係数(LVMI)の変化量は、シルニジピン群が−12.0g/m2、継続群が27.8g/m2で、有意な群間差が認められた(P<0.05)。重回帰分析により、LVMI低下の有意な因子として、シルニジピン投与と24時間LF/HF比の変化量が同定された。

 シルニジピン群において、LVMIの変化量と各種パラメーターの相関関係を調べたところ、eGFRと負の相関があることが分かった。したがって、eGFRが低値であるほど、LVMIの変化量は大きいことが示された。

 以上の検討から金岡氏は、「CKD患者へのシルニジピン投与は、交感神経活性や心肥大を抑制させる可能性が示された。また、eGFRが低い症例では、シルニジピンへの変更がLVMIをより改善させる可能性も示唆された」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)