長崎大学保健・医療推進センターの小川さやか氏

 日本人勤労者のうち、性格傾向がタイプA行動パターンの人は、そうでない人と比べ、内臓肥満傾向があり、抑うつ感が高く、睡眠異常の頻度が高いことが明らかになった。9月22日まで名古屋で開催されていた日本高血圧学会(JSH2012)で、長崎大学保健・医療推進センターの小川さやか氏らが報告した。

 「タイプA行動パターン」(TABP)とは、時間切迫感、熱中性、徹底性、自信、緊張、几帳面さ、怒りやすさ、攻撃性などに特徴づけられる心理行動学的概念で、冠動脈疾患の発症要因になることや、うつを増悪させる因子であることが報告されている。しかし、TABPが、動脈硬化や高血圧をはじめとする生活習慣病を発症させる機序については詳しく知られていない。

 そこで小川氏らは、日本人勤労者を対象に、TABPと肥満、抑うつとの関係について明らかにするため、2つの仮説を立て、横断的調査を行った。

 2つの仮説は、(1)TABP群は非TABP群よりも内臓肥満傾向がある、(2)TABP群は、非TABP群よりも生活習慣病(高血圧、肥満)のリスクが高く、心理行動面(食行動、抑うつ)を媒介している――というものだった。

 対象は勤労者3099人で、有効回答者は2959人(男性1437人、女性1522人)だった。TABPは580人、非TABPは2379人。

 調査項目は、身体指標(肥満、高血圧、糖尿病の割合、脂質、肝機能、血糖値)と心理行動指標(タイプA質問票、抑うつ、食習慣、運動習慣)とし、各項目についてTABP群と非TABP群で比較した。タイプA質問票において17点以上をTABPとし、抑うつに関しては抑うつ尺度CES-Dで16点以上とした。

 まず、身体指標について比較した結果、TABP群は、非TABP群と比べ、肥満(BMI 25kg/m2以上)の頻度が高かった(27% 対 17%)。また、TABP群は、非TABP群と比べ、ウエスト周囲径(81cm 対 78cm)、収縮期血圧(75mmHg 対 73mmHg)、拡張期血圧(125mmHg 対 121mmHg)、BMI(23±4 kg/m2 対 22±3 kg/m2)が有意に高値だった(いずれもP<0.0001)。

 心理行動学的指標においては、TABP群は、非TABP群に比べ、早食いの人(37% 対 27%)、就寝前2時間以内の夕食を週3回以上摂る人(43% 対 34%)、20歳時よりも現在の体重が10kg以上増加している人(31% 対 20%)、睡眠への不満感を持つ人(31% 対 21%)、抑うつ症状を持つ人(21% 対 17%)の頻度が有意に高かった。

 一方、ヘビー・ドリンカー(アルコール20mlを1杯とし、男性2杯/日以上、女性1杯/日以上)、喫煙、夕食後の間食が週3回以上、欠食が週3回以上の人の頻度には差がなかった。

 さらに、多重ロジスティック回帰分析をした結果、TABP群は非TABP群に比べ、肥満のオッズ比が1.43倍(95%信頼区間:1.00-2.06)だった。また、女性における肥満のオッズ比は0.38と低かったほか、30代以上、早食い、就寝2時間前の食事が週3回以上、運動習慣の不足、睡眠への不満感を持つ場合の肥満のオッズ比が高かった。

 TABPが肥満などの生活習慣病のリスク因子となるメカニズムについて小川氏は、「1つは、TABPが早食いや就寝前の食事など、食行動異常を増加させる可能性があり、内臓肥満を進行させている可能性がある。2つ目としては、TABPが抑うつ感を高め、高い抑うつ感が食行動を増悪させることで、内臓脂肪蓄積を進行させている可能性がある」と考察した。

 最初に立てた仮説(1)については、TABP群が非TABP群よりも肥満の割合が高かったこと、(2)についてはTABP群は非TABP群に比べ、早食い、就寝前の食事、抑うつ感、睡眠への不満感が高かったことから、どちらも支持されたとした。

 これらの結果から小川氏は、「日本人勤労者においてTABPの人は、非TABPの人に比べ、内臓肥満傾向で、その背景には食行動異常を伴う頻度が高かった。また抑うつ度が高く、睡眠異常の頻度も高かった」とまとめた。今後は、TABPを緩和するような心理・教育的アプローチを検討することで、肥満の改善・予防に効果的である可能性があると指摘し、TABPへの介入によって肥満が改善されるかについての検討が望まれると語った。

(日経メディカル別冊編集)