東北大学病院腎・高血圧・内分泌科の工藤正孝氏

 片側副腎全摘を行った原発性アルドステロン症患者において、無症候性脳梗塞(SBI)の合併率が40%だった実態が報告された。同時に、原発性アルドステロン患者における無症候性脳梗塞合併リスクを予測するために新たに設定した「PA-SBIスコア」が有用である可能性も示された。東北大学病院腎・高血圧・内分泌科の工藤正孝氏らの研究成果で、工藤氏は「原発性アルドステロン症における心血管疾患の発症を予防する上で、PA-SBIスコアなどの臨床指標が有用であることが示唆される」と語った。9月22日まで名古屋で開催されていた日本高血圧学会(JSH2012)で発表した。

 原発性アルドステロン症患者は、本態性高血圧症に比べ、心血管イベントの発症リスクが高いことが知られている。また、工藤氏らはこれまでに、原発性アルドステロン症患者には慢性腎臓病患者が多いことや、推算糸球体濾過量(eGFR)が低下するとSBI合併率が高いことを報告している。

 今回、工藤氏らは、原発性アルドステロン症におけるSBIの合併発症と、心房細動(AF)で用いられているCHA2DS2-VAScスコアおよびその各リスク項目との関連性を検証し、SBI合併を予測する新たなスコアを設定するために検討を行った。

 解析対象は、2007年8月〜2012年6月まで同科で原発性アルドステロン症と診断され、副腎静脈サンプリング(AVS)により片側の副腎アルドステロン過剰分泌の局在を確定後、腹腔鏡下副腎全摘除術を実施し、病理学的にアルドステロン産生腺腫(APA)と確定診断された73人。サブクリニカルクッシング症候群の合併患者は除外した。AVS実施前に頭部MRIを撮影し、SBIの合併の有無について判定した。

 患者の平均年齢は51.58歳、男性割合が50.7%だった。また、高血圧罹病期間は10.48年、収縮期血圧が152.01mmHg、拡張期血圧が91.86mmHg、PACは31.33ng/dLで副腎腺腫の大きさは16.12mmだった。

 有病率を見ると、片側副腎全摘を施行された原発性アルドステロン症患者の約40%が、SBIを合併していた。また、未破裂動脈瘤の合併率は約10%だった。アルドステロン産生腺腫患者におけるSBI発症部位をみると、半数の症例においてSubcortical領域だった。

 次に、SBI合併群とSBI非合併群について比較したところ、SBI群は年齢が高く(57.9歳 対 43.5歳)、収縮期血圧が高い(157.7mmHg 対 145.4mmHg)、HDLコレステロールが低い(47.9mg/dL 対 54.8mg/dL)、eGFRが低い(61.2 mL/min/1.73m2 対 78.4mL/min/1.73m2)、IMT最大値が高値(1.36mm 対 1.05mm)で、いずれも有意差が確認された。またPAC値については、有意差は見られなかったものの、SBI合併例で高値である傾向が見られた(31.3ng/dL 対 20.2ng/dL)。

 原発性アルドステロン症におけるSBI合併の有意なリスク因子としては、年齢(オッズ比1.214、95%信頼区間:1.044-1.409)と初診時収縮期血圧(同1.032、1.012-1.106)が抽出された。

 さらに、SBI合併とCHA2DS2-VAScスコアとの関係について検討した結果、SBI合併との有意な関連性は示されなかった(CHA2DS2-VAScは2.08±0.88)。

 一方、工藤氏らが新たに設定したPA-SBIスコア(年齢が55歳以上、初診時収縮期血圧が160mmHg以上、初診時eGFRが60mL/min/1.73m2未満、初診時PACが20ng/dL以上を各1点とし、最大スコア4点)を用いて、SBI合併との関連を検討した結果、有意な相関が確認された。PA-SBIスコアが上がるにつれ、SBI合併率が増加する傾向が確認された。SBIの合併率は、0点が0%、1点が33.3%、2点が57.7%、3点が77.8%、4点が100%だった。

 APA患者におけるPA-SBIスコアは1.46±0.96で、有意な関連性が示された(オッズ比3.08、95%信頼区間:1.53-6.20)。

 さらにROC分析の結果、PA-SBIスコアが2点以上の場合、SBI合併の的中率は約82%だった。

 これらの結果から工藤氏は、「今回報告した、年齢、初診時収縮期血圧、eGFR、PACの項目による新たなスコアなどを用いることで、SBIのハイリスク患者を抽出し、積極的な介入を行う必要がある」と指摘した。今後は両側病変(IHA)や本態性高血圧症との比較検討を進める予定だとしている。

(日経メディカル別冊編集)