東京医科大学循環器内科の小平真理氏

 肥満大・中動脈の器質的な硬さ亢進に関与することが確認された。一方、肥満症例での有意な圧脈反射増悪は確認されなかったため、肥満は末梢での反射効率に影響し、圧脈反射増悪に減弱的に作用する可能性が示された。東京医科大学循環器内科の小平真理氏が、9月22日まで名古屋で開催されていた日本高血圧学会(JSH2012)で発表した。

 動脈の器質的な硬さ亢進や圧脈反射異常は、心血管疾患発症の危険因子として注目されている。一方、心血管疾患発症の危険因子である肥満は、動脈の器質的な硬さ亢進に関与することが報告されている。動脈の器質的な硬さ亢進は、圧脈反射異常の増悪に作用するが、断面研究により、肥満症例では圧脈反射異常が小さいことが報告されている。ただし、これらの影響は前向き研究による解明が十分ではない。今回小平氏らは、動脈の器質的な硬さ亢進と圧脈反射異常に対する持続性肥満の影響を、3年間の前向き研究によって検討した。

 対象は、心血管疾患やその危険因子に対する治療を受けておらず、企業健診を受診した健常な日本人男性1291人(平均年齢43歳)とした。測定項目は、身長、体重、上腕−足首間脈波伝播速度(baPWV)、橈骨圧脈波解析(rAI)、橈骨収縮圧波形の第1および第2ピーク(SBP1、SBP2)、血液検査による総コレステロール、HDLコレステロール(HDL-C)、中性脂肪、空腹時血糖、クレアチニン。これら測定項目を、初回登録時と3年後の2度計測した。AIは、(SBP2−拡張期血圧)/(SBP1−拡張期血圧)の数式を用いて算出した。

 対象全体のBMIは、登録時には23.8kg/m2だったのに対し、3年後の追跡時には24.0kg/m2と増加した(P=0.031)。登録時も追跡時もBMIが25kg/m2以上だった人を持続性肥満群(326人、平均年齢46歳)、登録時もしくは追跡時、またはそのいずれの測定時にもBMIが25kg/m2未満だった人を非持続性肥満群(965人、平均年齢47歳)に割り付けて検討した。

 解析の結果、登録時のBMIは、持続性肥満群が27.5kg/m2、非持続性肥満群が22.8kg/m2と有意に持続性肥満群で高かった(P<0.001)。追跡時のBMIも、持続性肥満群は27.6kg/m2、非持続性肥満群は22.9kg/m2と有意に高かった(P<0.001)。登録時のrAIは、持続性肥満群の69%に対し、非持続性肥満群が72%と有意に高かった(P<0.001)。一方、追跡時のrAIは、持続性肥満群が73%、非持続性肥満群が76%だった(P=0.002)。baPWVとrAIの変化率を、両群でそれぞれ比較検討したところ、baPWVの変化率は、持続性肥満群で有意に高かった(P<0.05)。AIでは有意差が認められなかった。

 これらの結果から小平氏は、「これまでの報告と同様に、肥満は大・中動脈の器質的な硬さ亢進に関与することが確認された。こうした動脈の器質的な硬さ亢進は、脈波伝播速度を速めるため反射波の返達を早め、圧脈反射増悪に作用すると考えられる」と結論。その上で、「本研究では肥満症例での有意な圧脈反射増悪を確認できなかった。すなわち、肥満は末梢での反射効率に影響し、圧脈反射増悪には減弱的に作用すると考えられる」と考察した。

(日経メディカル別冊編集)