味の素製薬創薬研究センター探索研究所の川上麻衣氏

 コレステロールや脂肪を多く含む欧米型の食事(ウエスタンダイエット:WD)は、腎障害を含む臓器障害をもたらすことが近年、米国から報告された。このWDによる腎障害がL/N型Ca拮抗薬シルニジピンにより抑制される可能性を、味の素製薬創薬研究センター探索研究所の川上麻衣氏らが9月20日から名古屋で開催中の日本高血圧学会(JSH2012)で発表した。

 シルニジピンはL/N型Ca拮抗薬であり、血管平滑筋や心筋などに分布するL型Caチャネルだけでなく、交感神経終末に発現するN型Caチャネルにも作用する。そのため、交感神経系やレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系の活性亢進の抑制により、腎保護作用を示すことが知られている。一方、食事に起因する臓器障害には、RAA系阻害が有効であることが報告されている。そこで川上氏らは、WD摂餌マウスにシルニジピンまたはL型Ca拮抗薬のアムロジピンを投与し、両薬の効果を比較した。

 本検討では、9週齢の雄性C57BL/6Jマウス24匹を用いた。これらのマウスを、普通食群、WD(1.25%コレステロール+10%ヤシ油)を与えるWD群、シルニジピン0.025%含有WDを与えるシルニジピン群、アムロジピン0.004%含有WDを与えるアムロジピン群の4群(6匹ずつ)に分け、15週間摂餌した。飼育13週目に24時間蓄尿を行い、15週目に血液と臓器を採取した。

 血圧の推移に関しては、WD群では週を追うごとに上昇し、普通食群より有意に高値であった(P<0.001)。それに対し、シルニジピン群とアムロジピン群の血圧はともにWD群より有意に低く(いずれもP<0.001)、両薬の降圧作用は同等であった。

 尿中アルブミン濃度を見ると、WD群は普通食群に比べて有意に高かったが(P<0.001)、シルニジピン群のみWD群より有意に低かった(P<0.05)。また、尿中アルブミン排泄量はシルニジピン群のみWD群に対して有意に少なかった(P<0.01)。したがって、WDの摂餌による腎機能低下とシルニジピン投与による低下抑制が示された。

 腎臓の組織学的評価においても同様であった。WD群では普通食群に比べて糸球体体積が有意に増加したが(P<0.01)、シルニジピン群のみWD群に対して有意に減少していた(P<0.05)。すなわち、WDにより腎糸球体は肥大するものの、シルニジピンでのみ改善されることが示された。

 腎機能の保護作用の機序を検証するため、血漿中のRA系パラメーターを測定したところ、WD群においては臓器傷害的に働くアンジオテンシンIおよびIIの濃度が普通食群より有意に上昇していた(いずれもP<0.05)。一方、臓器保護的な作用の指標であるアンジオテンシン(1-7)/アンジオテンシンI比が、WD群では低下していたが、シルニジピン群ではWD群に比べて高い傾向にあった(P=0.0868)。

 以上の結果から川上氏は、「シルニジピンにはアムロジピンにはない降圧に依存しないN型Caチャネル阻害作用による腎保護作用を持ち、その機序にはアンジオテンシン(1-7)/アンジオテンシンIの比率亢進や交感神経活性の亢進抑制が関与している可能性が示唆された」と考察し、「こうしたWDによる臓器障害の改善メカニズムに関しては、さらなる検証が必要である」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)