昭和大学医学部内科学講座循環器内科学部門の茅野博行氏

 不安障害をもつ患者群は、正常群と比べ、夜間、早朝、夜間最低、24時間平均のぞれぞれの収縮期血圧が有意に高値だったことが示された。9月22日まで名古屋で開催されていた日本高血圧学会(JSH2012)で、昭和大学医学部内科学講座循環器内科学部門の茅野博行氏が発表した。

 これまでの海外の研究から、うつ状態や不安障害と高血圧もしくは循環器疾患が関連するとの報告が複数ある。しかし、日本人を対象にした報告は多くはない。そこで茅野氏らは、不安障害の存在と、夜間および早朝血圧、血圧変動との関連について、24時間自由行動下血圧計(ABPM)を用いて検討した。

 対象は、2008年4月から2010年3月までに同科外来で降圧剤による内服治療を受けた本態性高血圧患者120人。平均年齢は66±11歳、男性77人、女性43人。除外項目は、重症の上室性および心室性不整脈、ペースメーカー植え込み後、重症弁膜症。糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、脳卒中、神経筋疾患だった。

 まず、不安障害を評価するための自己記入式の質問票(Hospital Anxiety and Depression scale:HADs)を用い、2群に分類した。HADsは、身体疾患を有する患者において、身体疾患の影響を受けずに不安障害と抑うつ障害を評価する方法で、合計14項目から構成される。今回は、21点満点中、11点以上を不安障害陽性とした。

 血圧はABPMで計測し、(1)24時間、日昼(目覚めから就眠までの平均値)、夜間(就眠から目覚めまでの平均値)、早朝(目覚めから2時間の平均値)、夜間最低血圧(夜間最低値を含めた前後3点の平均値)、(2)血圧の型、(3)Morning Surge例(夜間最低値に比べ早朝血圧が50mmHg以上の上昇)のみの解析、(4)30分ごとの血圧変動――の4項目を測定。また、睡眠障害の有無と睡眠薬服用率についても調べた。

 血圧の型は、Extreme-Dipper(日昼と夜間の血圧差が20%以上)、Dipper(日昼と夜間の血圧差が10%以上20%未満)、Non-dipper(日昼と夜間の血圧差が0%以上10%未満)、Riser(日昼と夜間の血圧差が0%未満)と定義。Extreme-Dipperが8人、Dipperは40人、Non-dipperは45人、Riserは27人だった。

 正常群(HADsが10点以下)は78人、不安群(HADsが11点以上)は42人。臨床背景で、正常群と不安群に有意差があった項目は、BMIと診察室心拍数で、不安群で有意に高値だった。

 ABPMによる計測の結果、日昼の収縮期血圧については、正常群と不安群に有意差は見られなかった(142±15mmHg、144±13mmHg)。一方、夜間、早朝、夜間最低、24時間平均の収縮期血圧については、不安群で有意に高値だった。夜間収縮期血圧は正常群で126±14mmHg、不安群で142±16mmHg(P<0.0006)、早朝収縮期血圧はそれぞれ141±20mmHg、151±21mmHg(P<0.03)、夜間最低収縮期血圧は114±16mmHg、129±20mmHg(P<0.001)、24時間平均は137±14mmHg、143±13mmHg(P<0.03)だった。

 血圧の型において、不安群が占める割合を算出したところ、Extreme-Dipperが0%、Dipperが28%、Non-dipperが31%、Riserが63%だった。Dipperタイプを基準とし、不安群がRiserタイプになるオッズ比は4.48倍と有意に高値だったことから、不安障害と夜間高血圧が関係していることが示唆された。

 Morning Surge例(正常群が7人、不安群が5人)における収縮期血圧を解析した結果、日昼は両群間に有意差はないが、夜間血圧と早朝血圧では不安群が正常群と比べて有意に高かった。夜間収縮期血圧は、正常群が109±11mmHg、不安群が132±14mmHg(P<0.001)、早朝収縮期血圧はそれぞれ154±18mmHg、180±19mmHg(P<0.005)だった。茅野氏は「Morning Surge例のうち、早朝高血圧を示す患者は特に(不安障害の)リスクが高い群と言えるのではないか」と考察した。

 正常群の血圧変動は、夜間は日昼よりも変動性が落ちるのに対し、不安群では夜間は日昼と変わらず血圧変動性が高いことが分かった。また、不眠症状がある人の割合では、正常群で1割ほどだったのに対し、不安群では3分の2を占めた。

 これらの結果から茅野氏は、「不安障害を有する患者は、不眠症状を背景に、交感神経活性が亢進した状態となり、夜間から早朝にかけて血圧が上昇するため、血圧変動も大きくなると考えられる」と指摘した。

 最後に茅野氏は、「不安障害は、Morning Surgeの有無に関わらず、夜間および早朝高血圧に関連したことから、降圧管理を行う際には精神状態にも配慮することが望ましい」と語った。

(日経メディカル別冊編集)