広島大学大学院医歯薬保健学研究院応用生命科学部門脳神経内科学の松本昌泰氏

 高血圧症合併の有無に関わらず、非弁膜症性心房細動患者におけるリバーロキサバンの安全性と有効性が示された。また、リバーロキサバン群、ワルファリン群ともに、血圧値が高くなるにつれ、脳卒中および出血事象の発現率が上昇する傾向が示されたことから、広島大学大学院医歯薬保健学研究院応用生命科学部門脳神経内科学の松本昌泰氏は、抗凝固療法を行う際には厳格な血圧管理を行う必要があると指摘した。9月22日まで名古屋で開催されていた日本高血圧学会(JSH2012)で、J-ROCKET AF試験のサブ解析結果が報告された。

 高血圧症は、脳出血と脳梗塞の最大のリスク因子であり、血圧値が高いほど脳卒中の発症率が高くなることが報告されている。また、心房細動患者においても、高血圧症は血栓塞栓症のリスクであるほか、抗凝固療法時の出血リスクとなることが知られる。

 そこで、松本氏らは、J-ROCKET AF試験のサブ解析を行い、ベースライン時における高血圧症の有無別のほか、血圧値別に、リバーロキサバンの安全性と有効性について、用量調節ワルファリンと比較検討した。

 J-ROCKET AF試験は、日本人の非弁膜症性心房細動患者1280人を対象に、経口第Xa因子阻害剤リバーロキサバン(1日1回15mg、クレアチンクリアランスが30-49mL/minでは1日1回10mg)の有効性と安全性について、用量調節ワルファリンと比較した二重盲検ランダム化第3相臨床試験。これまでの報告から、安全性においてはリバーロキサバンのワルファリンに対する非劣性が示され、有効性ではワルファリン群に比べ、リバーロキサバン群でイベント発現率が低値だったことが報告されている。

 今回のサブ解析では、J-ROCKET AF試験において、スクリーニング来院前6カ月以内に降圧薬による治療を受けている、もしくは140mmHgを超える収縮期血圧あるいは90mmHgを超える拡張期血圧が持続している場合に高血圧症と定義し、高血圧症の有無別にサブ解析を行った。さらに、血圧分類JNC-7に基づき、ベースライン時の血圧値別で解析を行った。リバーロキサバン群が639人、ワルファリン群が639人。うち、高血圧症なしの患者はそれぞれ131人だった。

 両群間の患者背景に有意差はなかったが、うっ血性心不全と糖尿病患者の割合が、高血圧症なし群よりも高血圧症あり群の方で多かった(高血圧症なし群は26〜29.8%、高血圧症あり群は39.8〜45.3%)。また脳卒中/TIAまたは全身性塞栓症の既往は、高血圧症なし群が89.3〜92.4%で、高血圧症あり群の56.5〜56.7%よりも多かった。

 まず、安全性主要評価項目(重大な出血事象または重大ではないが臨床的に問題となる出血事象の年間発現率)をみると、高血圧症ありの患者の方が高血圧症なしの患者に比べて発現率がやや高い傾向が見られたが、有意差は認められなかった(P=0.933)。高血圧症ありのリバーロキサバン群が18.39%、ワルファリン群が16.81%(ハザード比1.10、95%信頼区間:0.84-1.45)、高血圧症なしのリバーロキサバン群が16.71%、ワルファリン群が15.00%でいずれも2群間に有意差はなかった(ハザード比1.14、95%信頼区間:0.66-1.97)。

 有効性主要評価項目(脳卒中または全身性塞栓症の年間発現率)についても、高血圧の有無による有意な交互作用は認められなかった(P=0.509)。高血圧症ありのリバーロキサバン群が1.45%、ワルファリン群が2.71%(ハザード比0.54、95%信頼区間:0.25-1.16)、高血圧症なしのリバーロキサバン群が0.54%、ワルファリン群が2.24%で、いずれも有意差はなかった(ハザード比0.25、95%信頼区間:0.03−2.25)が、リバーロキサバン群において発症抑制傾向がみられた。

 次に、JNC-7分類に基づき、正常群(収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80未満)、前高血圧群(120mmHg≦収縮期血圧<140mmHgまたは80mmHg≦拡張期血圧<90mmHg)、高血圧群(収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上)の3群に分け解析を行った。

 その結果、安全性主要評価項目(重大な出血事象または重大ではないが臨床的に問題となる出血事象の年間発現率)は、リバーロキサバン群とワルファリン群間において有意差は認められなかった(交互作用P値=0.567)が、血圧値が高くなるにつれ、出血事象の発現率が上昇する傾向が見られた。リバーロキサバン群における発現率は正常群が18.21%、前高血圧群が16.97%、高血圧群が19.96%、ワルファリン群ではそれぞれ15.85%、13.61%、21.42%だった。

 有効性主要評価項目(脳卒中または全身性塞栓症の年間発現率)においても、有意な交互作用は認められなかった(P=0.096)が、血圧値の上昇とともに脳卒中または全身性塞栓症の発現率が上昇する傾向があった。リバーロキサバン群では正常群が1.45%、前高血圧群が0.46%、高血圧群が2.62%、ワルファリン群ではそれぞれ0.58%、2.88%、3.54%。

 頭蓋内出血については、リバーロキサバン群で5例、ワルファリン群で10例見られた。この15例中14例で、ベースライン時に高血圧症が認められた(リバーロキサバン群が5例、ワルファリン群9例)。頭蓋内出血例のベースライン時血圧は、リバーロキサバン群が138.6/82.4mmHg、ワルファリン群で133.9/82.8mmHgだった。

 これらの結果について松本氏は、「リバーロキサバンの安全性および有効性は、用量調節ワルファリンとの比較において、高血圧症合併の有無に関係なく一貫していることが示唆された」とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)