滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門の鳥居さゆ希氏

 日本人男性において、動脈硬化の指標である上腕−足首間脈波伝播速度(baPWV)測定は、欧米で用いられる頚動脈−大腿動脈間脈波伝播速度(cfPWV)と同様に、冠動脈石灰化有病者の発見に有用であり、冠動脈疾患(CAD)の発症予測にも有用である可能性が示された。これは、滋賀医科大学を中心に行われている滋賀動脈硬化疫学研究(SESSA)の一環として行われた検討の成果で、同大学社会医学講座公衆衛生学部門の鳥居さゆ希氏が、9月22日まで名古屋で開催されていた日本高血圧学会(JSH2012)で発表した。

 CTにより測定する冠動脈石灰化は、CADのリスク評価に有用な冠動脈粥状硬化の指標として近年注目されている。また、cfPWVは、心血管疾患(CVD)の発症を予測するとの報告がある。欧米の横断研究では、冠動脈石灰化とcfPWV上昇が有意に関連しているとの報告があるが、日本を含むアジア諸国では測定が簡便なbaPWVが普及していることから、今回鳥居氏らは、日本人男性一般集団においてbaPWVと冠動脈石灰化との関連を2006〜2008年に調査し、横断的に検討した。

 対象は、SESSAの参加者で、滋賀県草津市在住の一般住民である40〜79歳の男性987人。データの欠損がある人や、CVD既往がある人は解析から除外した。この対象を、左右のbaPWV平均値の4分位で分類した(1378cm/s未満が247例、1378cm/s以上1564cm/s未満が247例、1564cm/s以上1848cm/s未満が247例、1848cm/s以上が246例)。

 電子ビームCT(EBCT)による冠動脈石灰化指数が10以上だった場合、冠動脈石灰化指数陽性と定義した。多重ロジスティック回帰分析により、baPWV4分位による冠動脈石灰化指数陽性リスクのオッズ比を検討した。分析には、baPWVと関連する因子を調整したモデルを使用した。モデル1では年齢を調整し、モデル2では年齢に加え、BMI、総コレステロール、HbA1c、収縮期血圧、脈拍数、降圧薬治療、喫煙習慣(現在喫煙、過去喫煙、非喫煙)、飲酒週間(1日アルコール摂取量:非飲酒者は0g/日とした)を調整した。

 4分位別の冠動脈石灰化指数の陽性率は、第1分位(左右のbaPWV平均値が1378cm/s未満)で21%、第2分位(同1378cm/s以上1564cm/s未満)で42%、第3分位(同1564cm/s以上1848cm/s未満)で56%、第4分位(同1848cm/s以上)で67%だった。baBWVが上昇するほど、有意に増加傾向があった(P<0.001)。

 冠動脈石灰化指数の陽性リスクの調整オッズ比は、モデル1において第1分位を基準とすると、第2分位2.02、第3分位2.94、第4分位3.60と、baBWVが上昇するほど有意にオッズ比が上昇した(trend P<0.001)。モデル2でも、傾向はやや弱まるものの、baBWVが上昇するほど有意にオッズ比が上昇した(trend P=0.002)。

 これらの結果から、他の危険因子と独立して、baPWVの値が高いほど冠動脈石灰化指数が有意に高くなることが示された。鳥居氏は、「日本人男性において、baPWV高値により示される動脈壁硬化は、他の危険因子と独立して冠動脈石灰化指数陽性のリスクと関連する」と結論。「baPWV測定はcfPWVと同様に冠動脈石灰化有病者の発見に有用であるとともに、CADの発症予測にも有用である可能性がある」と考察した。

(日経メディカル別冊編集)