東北大学病院メディカルITセンターの井上隆輔氏

 非喫煙者の女性であっても、同居家族に喫煙者がいる場合は、いない場合に比べて脳卒中発症のリスクが有意に高いことが分かった。大迫研究の参加者を対象とした縦断的な検討で明らかになったもので、東北大学病院メディカルITセンターの井上隆輔氏が、9月20日から名古屋で開幕中の日本高血圧学会(JSH2012)で発表した。

 海外では、能動喫煙だけでなく、受動喫煙も脳心血管疾患のリスクとなることが報告されている。しかし日本では、脳卒中発症の最大の危険因子である高血圧を有さない正常血圧集団において、受動喫煙と脳卒中発症との関連を検討した報告はなされていない。そこで井上氏らは、同居家族の喫煙を受動喫煙の指標とし、受動喫煙と脳卒中の関連を日本人正常血圧者で検討した。

 対象は、大迫地域住民のうち、脳卒中既往のない30歳以上の非喫煙女性で、家庭血圧正常(125/80mmHg未満かつ降圧薬非服用)の764人(平均50.1歳)とした。対象には、調査時点での独居者も含んでいる。これを同居家族の喫煙状況によって、「家族の喫煙なし」(252人)、「過去に家族の喫煙あり」(63人)、「現在家族の喫煙あり」(449人)の3群に分けて、同居家族の喫煙の影響を比較検討した。

 追跡期間は平均12.9年(最長16.9年)だった。観察の結果、追跡期間中に22人の脳卒中発症を認めた。そのうち脳梗塞が16人、出血性脳卒中が6人だった。対象者を脳卒中発症の有無で分けて基礎特性を見たところ、脳卒中発症群の方が年齢、家庭収縮期血圧、BMI、糖尿病既往患者の割合が有意に高かった(それぞれP<0.01、P<0.01、P<0.05、P<0.05)。

 「家族の喫煙なし」群を基準とした場合の脳卒中発症リスクのハザード比を求めたところ、「現在家族の喫煙あり」群は有意に高値だった(95%信頼区間:1.01−34.5)。また、「過去に家族の喫煙あり」群は、有意ではなかったが高い傾向にあった(同:0.20-29.2)。

 同様に、脳梗塞発症リスクのハザード比を求めたところ、「現在家族の喫煙あり」群は「家族の喫煙なし」群に比べ高い傾向があった(95%信頼区間:0.60-31.5)。「過去に家族の喫煙あり」群も、「現在家族の喫煙あり」群ほどではないが高い傾向にあった(同:0.20-34.7)。

 これらの結果から井上氏は、「同居家族の現在の喫煙が脳卒中発症と有意に関連した。家庭血圧正常の女性には、家庭での受動喫煙は脳卒中リスクとなりうるため、脳卒中予防には家庭内での受動喫煙対策も重要だ」と結論。「家族が過去喫煙者の場合は、家族が喫煙なしであった場合と比較するとリスクが高いが、現在喫煙者の場合よりはリスクが低いことから、同居家族の禁煙により脳卒中リスクが低下する可能性がある」と考察した。

(日経メディカル別冊編集)