九州大学創薬育薬産学官連携分野の西田基宏氏

 シルニジピンは独特の薬理学的作用を有するCa拮抗薬で、L型Caチャネルだけでなく、神経終末に多く発現し神経伝達物質の放出に関与するN型Caチャネルも遮断する。最近では、N型Caチャネル阻害により副腎からのアルドステロン産生が抑制されるとの報告もある。九州大学大学院薬学研究院創薬育薬産学官連携分野の西田基宏氏らは、シルニジピンはアンジオテンシン(Ang)II誘発性の血管内皮障害をN型Caチャネルの阻害を介して抑制することを、9月20日に名古屋で開幕した日本高血圧学会(JSH2012)で報告した。

 今回は、野生型マウスおよびN型Caチャネル欠損マウスを用いて、AngII誘発性の血管内皮障害におけるN型Caチャネルの役割を検討した。対照薬としては、L型選択的Ca拮抗薬であるアムロジピンを用いた。

 8〜10週齢の雄性C57BL/6Jマウスに、浸透圧ポンプを用いてシルニジピン(30mg/kg/日)あるいはアムロジピン(10mg/kg/日)、溶媒のいずれかを腹膜内に投与(Ca拮抗薬の投与量は同等の降圧作用が得られる濃度とした)。その3日後からは、別の浸透圧ポンプを用いてVal(5)-AngII(1mg/kg/日)を4週間にわたり腹膜内投与を行った。

 心と腎の重量変化を見ると、野生型マウスにおいては、AngII刺激によっていずれも増加したが、シルニジピンはそれらの増加をアムロジピンより抑えていた。一方、N型Caチャネル欠損マウスにおいては、シルニジピンとアムロジピンは同程度抑制していた。したがって、N型Caチャネル阻害作用が加わることで、心・腎の重量増加の抑制作用がより強まることが示唆された。

 次に、内皮依存性の血管拡張反応をマウスの胸部大動脈で調べたところ、野生型マウスではAngII刺激によって明らかに障害されたが、シルニジピン群では溶媒群と同レベルに回復していたのに対し、アムロジピン群では部分的な回復にとどまった。しかし、N型Caチャネル欠損マウスでは、シルニジピンとアムロジピンの作用に違いは認められなかった。

 AngIIの投与法の妥当性を検討するために血圧の変化を調べた結果、野生型マウス、N型Caチャネル欠損マウスではともにAngII刺激によって血圧が上昇したが、シルニジピン、アムロジピンはいずれも血圧上昇を同程度抑制した。そのため、両薬の投与によって、L型Caチャネルは同程度遮断されていると考えられた。なお、アムロジピン群ではL型Caチャネル遮断に起因すると思われる反射性頻脈が認められたが、N型Caチャネルも遮断するシルニジピン群では認められなかった。

 血管内皮障害の抑制メカニズムを検討したところ、野生型マウスでは、腹部大動脈の酸化ストレスがAngII刺激により増強したが、シルニジピン群では溶媒群と同レベルまで抑制され、アムロジピン群では抑制は部分的であった。一方、N型Caチャネル欠損マウスでは、シルニジピン群とアムロジピン群の酸化ストレス抑制作用に違いは認められなかった。また、酸化ストレスの下流で起きるマクロファージ浸潤、すなわちAngII刺激によって亢進した腹部大動脈へのマクロファージ浸潤についても、結果は同様であった。

 さらに、ウシ大動脈内皮細胞(BAEC)で、N型CaチャネルはATPによって誘発される活性酸素種(ROS)産生に関与することが確認された。加えて、N型Caチャネル特異的阻害薬のωコノトキシンによってROS産生が有意に抑制されたことなどから、演者らは、N型Caチャネルを介した細胞内Ca流入がROS産生に関与しているのではないかとの見解を示した。

 以上の結果を踏まえ西田氏は、「N型Caチャネル阻害作用は、シルニジピンによる血管内皮保護作用の一部を担っているのではないか」と語った。

(日経メディカル別冊編集)