東京大学腎臓内分泌内科の河原崎千晶氏

 ナノバイオテクノロジーを活用した腎糸球体特異的ドラッグデリバリーシステム(DDS)により、腎糸球体局所での交感神経系を抑制することで、腎局所の病変が改善される可能性が示された。東京大学腎臓内分泌内科の河原崎千晶氏らが、9月20日に名古屋で開幕した日本高血圧学会(JSH2012)で発表した。

 腎交感神経は、血圧調節ばかりか腎機能保持においても重要な役割を果たすことが報告されている。また、最近は腎交感神経除神経術を行うことで難治性高血圧患者で有意に血圧低下を認めたことが報告され、注目を集めたばかりだ。

 演者らはすでに、慢性腎臓病において交感神経活動の亢進が血圧上昇ならびに腎障害に関与している可能性を報告している(Hypertension 2012;59:105)。今回は、腎糸球体特異的なキャリアであるブロックコポリマー(PEG-PLL。J Am Soc Nephrol 2010;21;622)を利用し、カテコラミン合成の律速酵素であるチロシン水酸化酵素(TH)のsiRNA(RNA干渉を起こす二本鎖RNA)を投与することで交感神経系を抑制し、腎障害との関係を検討した。

 交感神経亢進を伴う腎障害合併高血圧モデルには、DOCA(デオキシコルチコステロン酢酸塩)-食塩ラットを用いた。片腎摘+DOCA投与+8g食塩食負荷を行い、3週間の観察を行った。これにPEG-PLLによってTHのsiRNAを糸球体特異的に投与し、血圧ならびに腎機能への影響を観察した。

 その結果、血圧は、TH siRNA投与ラットと非投与ラットともに上昇していた。一方、尿蛋白や尿アルブミンは、TH siRNA投与ラットでのみ有意に少ないという結果だった。糸球体におけるTHの発現を調べたところ、TH siRNA投与ラットでのみ、発現を抑制していた。つまり、糸球体特異的なTH発現抑制により、腎糸球体に限定した腎保護効果が認められたことになる。

 これらの結果から演者らは、DOCA-食塩高血圧ラットモデルにおいて、糸球体の交感神経抑制は糸球体障害の進展において重要な役割を果たしていることが示唆された、と結論付けた。

(日経メディカル別冊編集)