国際医療福祉大学三田病院内科の佐藤敦久氏

 RA系抑制薬による治療を比較的長期間継続すると、効果の強い直接的レニン阻害薬による治療であっても、一度下がった血漿アルドステロン濃度がベースライン値以上に再上昇する現象(アルドステロン・ブレイクスルー現象)が一定の割合で認められることが分かった。アルドステロン・ブレイクスルー現象を起こした症例では、その後選択的アルドステロンブロッカーを追加投与すると尿中アルブミン排泄量が有意に低下したため、アンジオテンシンII標的治療とアルドステロン標的治療を早期から並行させると有効である可能性が示された。国際医療福祉大学三田病院内科の佐藤敦久氏が、9月20日に名古屋で開幕した日本高血圧学会(JSH2012)で発表した。

 佐藤氏らの以前の報告で、糖尿病腎症治療中にアルドステロン・ブレイクスルー現象を認めた例と認めなかった例を比較すると、血圧はどちらも同程度低下するが、アルドステロン・ブレイクスルー現象を認めた例では尿中アルブミン排泄量と血漿アルドステロン濃度が増加することが明らかになっている。直接的レニン阻害薬は、RA系の活性起点であるレニンの産生を阻害するため、包括的なRA系抑制力が強い。ALOFT試験では、3カ月後の尿中アルドステロン量が19%、ALLAY試験では9カ月後の血中アルドステロン量が25%低下したことが報告されており、直接的レニン阻害薬ではアルドステロン・ブレイクスルー現象を起こさない可能性も指摘されている。そこで今回佐藤氏らは、本態性高血圧患者を対象に直接的レニン阻害薬を投与し、アルドステロン・ブレイクスルー現象が起こるかどうかについて検討した。

 対象は、同院通院中で、原発性アルドステロン症を含めた二次性高血圧を否定した本態性高血圧患者。そのうち、直接的レニン阻害薬(アリスキレン)150mgを朝1回単剤投与、もしくは血漿アルドステロン濃度に影響を与えないと考えられている長時間作用型Ca拮抗薬(アムロジピン)との併用投与で治療を受けた40例(うち男性18例)とした。2週間後に外来診療を行い、その後問題がなければ4週間ごとの受診とした。血漿レニン活性、血漿アルドステロン濃度は治療前、3カ月、6カ月、12カ月後に測定した。血漿アルドステロン濃度が治療前の値を上回った場合に、アルドステロン・ブレイクスルー現象が発生したと判定した。

 治療前と治療48週後を比較したところ、血圧は収縮期・拡張期ともに有意に低下した。4週後から有意な血圧の低下を始め、安定した降圧効果は48週まで継続した。血漿レニン活性は12週後には有意に低下し、24週後にはさらに低下した。血漿アルドステロン濃度は全体として有意な変化は認めなかった。12週後、24週後の時点では有意な低下が認められたが、48週後にその有意差は消失し、40症例中22例(55%)でアルドステロン・ブレイクスルー現象を認めた。

 アルドステロン・ブレイクスルー群、非アルドステロン・ブレイクスルー群で唯一違いがあったのは尿中アルブミン排泄量で、アルドステロン・ブレイクスルー群では尿中のアルブミン低下効果が減弱することが示された。血圧、血漿レニン活性には差を認めなかった。

 そこで、アルドステロン・ブレイクスルー群に選択的アルドステロンブロッカー(エプレレノン)50mgを追加投与し、血圧、尿中アルブミン排泄量の推移を検討した。その結果、12週後には拡張期・収縮期血圧はともに有意な低下を見せた。尿中のアルブミン排泄量は、血圧が下がりきっていない4週後にはすでに有意な低下効果を示し、12週後にはさらに低下した。

 これらの結果から、佐藤氏は「RA系抑制薬を投与すると、短期的にはアルドステロンが完全にアンジオテンシンIIの調整下に置かれるため、どのRA系阻害薬においてもアルドステロンの低下が認められる。特に、直接的レニン阻害薬の効果が強いということが分かった。ただし、6カ月を過ぎた比較的長期の治療では、アルドステロンはRA系以外の因子によっても調整され始める可能性がある。RA系の律速酵素であるレニンを直接ブロックしても、比較的長期の治療では血漿アルドステロン濃度が再上昇し、症例によってはアルドステロン・ブレイクスルー現象を認める。そこで、選択的アルドステロンブロッカーを追加投与すると尿中アルブミン排泄量が有意に低下したことから、アンジオテンシンIIを標的とした治療と、アルドステロンを標的とした治療を早期に並行させると有効である可能性がある」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)