久留米大学心臓・血管内科の福田賢治氏

 急性脳梗塞患者において、入院11日目以降に血圧の日間変動幅が大きい患者は長期予後が不良である可能性が指摘された。また、入院開始から10日目までに収縮期血圧高値だった場合、短期機能が予後不良であることも分かった。Fukuoka Stroke Registryにおける急性期脳梗塞患者の日間血圧変動と予後の関係について検討した結果、明らかになった。久留米大学心臓・血管内科の福田賢治氏が、9月20日に名古屋で開幕した日本高血圧学会(JSH2012)で発表した。

 これまでの研究から、脳梗塞急性期において血圧が高値の患者は予後不良であるとする報告が複数ある。また、長期間にわたって外来血圧や家庭血圧の血圧変動が大きいことが、死亡や再発の予測因子であるとする報告もある。

 そこで福田氏らは、脳梗塞患者を対象に、急性期から亜急性期まで血圧を測定し、血圧変動が短期および長期予後に及ぼす影響について検討した。

 対象は、2007年6月から2011年2月までに、福岡県内7施設からなる多施設共同登録研究「Fukuoka Stroke Registry(FSR)」に登録された急性期脳卒中患者(連続4951例)のうち、発症前のADLが自立していて、発症24時間以内に入院し、11日以上入院した初発脳梗塞患者1476人。入院20日目までに死亡・脳卒中を再発した例は除外した。

 血圧測定は、入院開始3日間は1日3回定時(10時、14時、18時)に測定し、その後は1日1回(午前10時)の測定とした。入院期間を急性期(入院1〜3日目)、後急性期(入院4〜10日目)、亜急性期(入院11〜20日目)の3つに分けた上で、患者ごとに収縮期・拡張期血圧の平均値、標準偏差、変動係数(標準偏差/平均血圧)を算出した。

 短期予後に関する評価項目は、発症3カ月後の機能予後(Modified Rankin Scale 3点以上を機能予後不良と定義)と各血圧評価項目との関連とした。長期予後に関する評価項目は、全死亡または脳卒中再発、全死亡、脳卒中再発の3項目について各血圧評価項目との関連を検討した。観察期間中央値は381日(範囲:18〜1124日)だった。

 患者背景は、平均年齢が70.2歳、女性割合は37.7%、BMIが23.1 kg/m2、総コレステロール値が5.03 mmol/L、高血圧患者割合が78.9%、糖尿病患者割合が28.7%。rtPA投与による治療は11.2%を占めた。

 まず、発症3カ月後における短期機能の予後不良因子を検討したところ(年齢、性のみを調整)、急性期においては収縮期血圧平均値が高値、後急性期においては収縮期血圧平均値が高値のほか収縮期血圧値の変動幅が大きいこと(標準偏差または変動係数が高いこと)、亜急性期は収縮期血圧の変動幅が大きいことが、それぞれ抽出された。虚血性心疾患の既往、病型、BMI、降圧薬投与の有無などの16項目で調整した場合も同様の結果だった。

 各時期の収縮期血圧の平均値または標準偏差を四分位で分け、短期の予後不良リスクを検討した結果、急性期と後急性期で平均血圧が最高位だった群は最低位群と比べ、有意に予後不良だった。また、後急性期と亜急性期において血圧変動幅が最も大きかった群は最低位群と比べ、有意に予後不良だった。拡張期血圧でも同様の結果が得られた。

 次に、長期予後不良(全死亡・脳卒中再発)の有意な因子を検討した結果(年齢、性別で調整)、急性期においては予後不良因子は抽出されなかった。一方、後急性期と亜急性期においては収縮期血圧の変動幅が大きいことが抽出された。さらに多変量解析を行った結果、亜急性期における収縮期血圧の変動幅が大きいことのみが有意な因子だった。

 各時期の収縮期血圧の平均値または標準偏差を四分位で分け、長期の予後不良リスクを検討した結果、亜急性期において血圧変動幅が最も大きかった群は最低位群と比べ、有意に長期予後不良リスクが高かった。

 これらの結果から福田氏は、急性期脳梗塞患者の入院中の血圧、とくに日間変動を経時的に評価することは、短期および長期予後の予測に役立つ可能性があると指摘。今後、そのメカニズムを解明し、臨床上の血圧管理戦略に反映できるようさらなる検討が必要と語った。

(日経メディカル別冊編集)