熊本大学の光山勝慶氏

 心血管系疾患あるいはCKDを合併する高齢高血圧患者の追加治療において、ARB+CCB併用療法が有効である可能性が示された。OSCAR Studyのサブ解析の成果で、研究グループを代表して熊本大学の光山勝慶氏が、9月20日に名古屋で開幕した日本高血圧学会(JSH2012)で発表した。

 OSCAR Studyは、日本の高齢高血圧患者に対し、第1選択薬であるアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)で十分な降圧が達成できなかった場合の追加治療として、ARBの増量(高用量ARB療法)とARB+Ca拮抗薬(CCB)併用療法の心血管イベント抑制効果を直接比較するために実施された。主要評価項目の心血管系イベント/非心血管死の発症率については、心血管疾患を合併している場合はARB+CCB併用療法が有効だったことがすでに報告されている。今回は、事前に設定していた慢性腎臓病(CKD)サブ解析の結果が報告された。

 対象は、心血管疾患もしくは2型糖尿病を1つ以上有し、ARB(オルメサルタン)20mg/日単剤治療によって降圧目標値(140/90mmHg未満)を達成できない高齢高血圧患者とした。対象をARBの増量(高用量ARB)群(オルメサルタン40mg/日)と、ARB+CCB併用群(オルメサルタン20mg/日+アムロジピンかアゼルニジピン)に無作為に割付けした。それでも降圧目標が達成できない場合には他の薬剤を使用してもよいとし、3年間追跡した。

 以前報告した主要評価項目とした心血管系イベント/非心血管死の発症率は、ARB+CCB併用群の方が高用量ARB群よりも低い傾向があったが、有意差は認められなかった。ただし、心血管病の既往がある患者に限ると、ARB+CCB併用群が有意にイベントの発症率が低かった(P=0.0261)。一方、心血管病の既往はないが、2型糖尿病を合併している患者に限ると、高用量ARB群の方が発症率が低い傾向があった。この交互作用には、有意差が認められた(P=0.0236)。

 今回行ったOSCAR StudyのCKDサブ解析では、CKD患者と非CKD患者において、ARB+CCB併用群と高用量ARB群の致死性および非致死性心血管イベント/非心血管死の発症率を比較検討した。OSCAR Studyの登録患者1164例中、血清クレアチニン値の測定に欠損があった86例を除外した1078例の患者を対象とした。eGFR値60mL/min/1.73m2未満をCKD患者(353例、平均eGFR値47.8mL/min/1.73m2)とし、eGFR値60mL/min/1.73m2以上の患者は非CKD患者(725例、平均eGFR値76.7mL/min/1.73m2)とした。

 その結果、CKD患者では高用量ARB群に比べARB+CCB併用群において有意に心血管イベント/非心血管疾患発症率が減少した(P=0.0096)。特に、ARB+CCB併用群のCKD患者において、脳血管疾患(ハザード比[HR]:3.45、95%信頼区間[95%CI]:1.20-9.92、P=0.0151)と心不全(HR:9.27、95%CI:1.11-77.29、P=0.0148)の発症が有意に抑制された。一方、非CKD患者では両群に有意差を認めなかった。CKD患者と非CKD患者間には有意な交互作用が認められた(P=0.0293)ため、光山氏は、「それぞれの治療効果にはサブグループ間で差異があることが証明できた」と語った。

 血圧は、CKD患者、非CKD患者ともに、高用量ARB群よりもARB+CCB併用群の方が有意に低下した。ベースライン時点とフォローアップ期間最終時点のeGFR値を比較すると、CKD患者、非CKD患者ともに高用量ARB群とARB+CCB併用群間で有意差はなかった。

 また高齢者の降圧目標値について検討するため、OSCAR Studyでの到達血圧値別に主要評価項目のハザード比を検討した。到達収縮期血圧の130mmHg未満(275例)をハザード比1.00とした場合、Jカーブは見られなかった。一方、傾向検定では有意差が認められた(P<0.001)。同様に、到達拡張期血圧も70mmHg未満(262例)をハザード比1.00とした場合、Jカーブは見られず、傾向検定では有意差が認められた(P=0.003)。光山氏は、「JSH2009のガイドライン通、高齢者でも十分な降圧コントロールが重要である」と指摘した。

 以上の結果から光山氏は、「第1選択薬としてARBを投与し、降圧が不十分な場合、ベースラインに心血管系疾患あるいはCKDを合併していればARBとCCBの併用療法が有効である可能性がある。一方、以前報告したとおり、心血管系疾患がなく、2型糖尿病を合併している場合は、高用量ARB療法が有効であると示唆されている」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)