滋賀医科大学公衆衛生学部門/東北大学大学院薬学研究科医薬開発構想寄附講座の大久保孝義氏

 家庭血圧による至適降圧レベルなどを検討するために実施されたHOMED-BP研究Hypertension Objective Treatment Based on Measurement by Electrical Devices of Blood Pressure Study)の結果、家庭血圧に基づいた降圧治療は、家庭血圧130/75mmHgを達成できるだけでなく予後改善につながる可能性も明らかになり、その有用性が示された。研究グループを代表して滋賀医科大学公衆衛生学部門/東北大学大学院薬学研究科医薬開発構想寄附講座の大久保孝義氏らが、10月20日から22日まで宇都宮で開催された日本高血圧学会(JSH2011)で発表した。

 同研究の降圧目標値は、通常管理群が早朝家庭血圧を125〜134/80〜84mmHgに、厳格管理群が同125/80mmHg未満に設定された。両群とも、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬のいずれかの薬剤で降圧治療を開始し、目標を達成できない場合は増量、併用薬の追加を段階的に行った。

 2009年4月末までに未治療あるいは降圧薬がwash-outされた軽症・中等症の高血圧患者5211人が登録された。しかし、家庭血圧が基準を満たしていないなどの理由により、そのうち3518人が通常管理群(1759人)あるいは厳格管理群(1759人)に無作為に割り付けられた。すなわち、対象には白衣高血圧が含まれていない。

 登録時の患者背景は、年齢が59.6歳、女性比率がほぼ50%、BMIが24.4kg/m2、喫煙者が22%、糖尿病罹患者(空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c[NGSP]6.5%以上または治療病治療薬服用中)が15%、高脂血症罹患者(総コレステロール220mg/dL以上または治療薬服用中)が34%、脳心血管疾患既往者が3%。なお、追跡期間は最長8.9年、平均5.3年だった。

 主要評価項目(脳卒中、心筋梗塞、循環器死亡の複合エンドポイント)の発生数が少なく、降圧目標の異なる2群間で血圧差がわずかしか認められなかったことから2010年4月末で追跡を終了した。家庭血圧は両群をまとめてみると、130/75mmHgにまで低下していた。また、外来血圧は家庭血圧と同レベルまで低下していた。なお、ベースラインからの降下度は厳格管理群の方が大きかったが、最終的な群間差は1mmHg程度にとどまった。

 主要評価項目のKaplan-Meier曲線を見ると、両群で有意差は認められなかった。1000人年当たりのイベント発生率は両群とも3程度と、これまでの介入試験と比較して低かった。

 主要評価項目発生群(51例)と非発生群(3467例)で背景を比較したところ、発生群では非発生群に比べて、登録時の家庭収縮期血圧(158.1mmHg 対 151.5mmHg)、追跡期間中の家庭収縮期血圧(138.7mmHg 対 129.6mmHg)が有意に高かった。一方、登録時および追跡期間中の家庭拡張期血圧、外来血圧においては、有意な群間差が認められなかった。また、登録時のいずれの血圧レベル群においても、家庭血圧の降圧とともに主要評価項目発生群は減少した。したがって、「the lower, the better」が証明されたとした。

 今回の解析結果から大久保氏は、「家庭収縮期血圧を125mmHg未満に降圧することは実地臨床下では困難だった。しかし、家庭血圧を130/75mmHg程度に降圧することは達成可能で、その結果として予後が改善する可能性が示唆された」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)