福島県立医科大学腎臓高血圧・糖尿病内分泌代謝内科学講座佐藤博亮氏

 薬を飲み忘れた経験がある人はそうした経験がない人より処方薬剤数の減少に肯定的であり、また家庭血圧測定の意義を感じている人は服薬を忘れにくいことが、患者へのアンケート結果から示された。福島県立医科大学佐藤博亮氏らが、10月20日から22日まで宇都宮で開催された日本高血圧学会(JSH2011)で発表した。

 近年、降圧薬では数多くの合剤が販売されている。高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病の治療において、服薬アドヒアランスの向上は重要だが、合剤が服薬アドヒアランスの向上に寄与しているかどうかは明らかになっていない。そこで佐藤氏らは、降圧薬を服用している患者を対象にアンケート調査を実施した。福島県内の12医療機関の協力を得て無記名による患者アンケートで実施したところ、293人から回答を得た。

 集計の結果、「服用を忘れた(または薬が余る)ことがある」と答えたのは38%だった。さらに、年代別にみると、忘れたことがあると回答した患者の割合は、年代が低いほど増える傾向があった。服用を忘れる頻度は、「週に3回以上」が2%、「週に1、2回」が22%、「月に1〜3回」が43%、「数カ月に1回」が31%だった。服用を忘れる時間については、「朝」が51%と、約半分を占めた。服用を忘れる理由として最も多かったのは、「仕事と重なるため」(52%)だった。

 服用している薬剤数は、「2剤」が最も多く、次いで「1剤」と「3剤」が多かった。飲んでいる薬が1剤でも減ると飲み忘れが減るかという問いには、「とても思う」(9%)、「やや思う」(14%)、「あまり思わない」(31%)、「全く思わない」(46%)と、肯定的な回答が少なかった。これを飲み忘れた経験の有無で分けて見たところ、飲み忘れたことがない人では「とても思う」と「やや思う」を合わせて18%だったのに対し、飲み忘れたことがある人では合わせて31%と、飲み忘れた経験があると肯定的な回答が多くなった。

 家庭血圧計で血圧を自己測定している人は62%だった。さらに、自己測定している人に、自分で血圧を測ることがどのように役立っているかを、「(1)自分で血圧値を確認できるため、治療意欲が向上する」、「(2)医師とのコミュニケーション促進」、「(3)自己血圧の日内変動の情報を知ることができる」という選択肢を提示して回答してもらった。その結果、「(1)のみ」が31%と最も多く、以下、「(3)のみ」(23%)、「3項目すべて」(15%)、「(1)と(3)」(11%)、「(2)のみ」(9%)、「(1)と(2)」(7%)、「(2)と(3)」(3%)の順だった。役立っていると答えた理由の数別に飲み忘れた経験を見ると、「1つ」は48%、「2つ」は23%、「3つ」は27%と、「1つ」の患者では薬剤を飲み忘れた経験が多かった。

 これらの結果を踏まえ佐藤氏は、「薬剤の飲み忘れは30歳代から50歳代までの人に多かった。飲み忘れたことがある人の方が処方薬剤数の減少に肯定的であり、家庭血圧測定の意義を感じている人ほど飲み忘れが少なかった」とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)