味の素製薬の川上麻衣氏

 L/N型Ca拮抗薬シルニジピンが、臓器保護的に働くアンジオテンシン(Ang)(1-7)を増加させ、高血圧によって惹起される心肥大や心線維化を抑制することが、高血圧モデルラットを用いた研究で示された。10月20日から22日まで宇都宮で開催された日本高血圧学会(JSH2011)で、味の素製薬川上麻衣氏らが報告した。

 シルニジピンはL/N型カルシウム拮抗作用を持つ唯一のCa拮抗薬である。L型Ca拮抗薬と比較して臓器保護作用に優れていることが報告されており、作用機序として、レニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系(RAAS)の抑制が示唆されている。

 川上氏らは、8週齢のSDラットにアンジオテンシン(Ang)II(800ng/kg/分)を充填したオスモティックポンプを埋め込むことによって高血圧モデルラットを作製。このモデルを用いて、シルニジピンとアムロジピンの血圧および臓器障害に対する作用およびRAASへの影響を比較検討した。

 モデル動物は無治療群(溶媒投与)、シルニジピン(3mg/kg/日)群、アムロジピン(3mg/kg/日)群に分けて各投与液を経口投与し、4週間後に麻酔下にて採血して血中RAASの評価を行った。また生理食塩水を充填したオスモティックポンプを埋め込んだSDラットを正常対照群とした。

 収縮期血圧は正常対照群(8例)で140±7mmHg、無治療群(8例)では202±24mmHgと正常対照群と比較して有意に上昇(P<0.05)していたが、シルニジピン群(8例、148±8mmHg)とアムロジピン群(8例、149±9mmHg)では無治療群と比較して有意に低下(いずれもP<0.05)しており、両群の降圧作用は同等であった。

 BUNは、正常対照群で19.6±0.6mg/dL、無治療群で25.4±2.1と、AngII投与によって有意に高値(P<0.05)を示したが、シルニジピン群では無治療群と比較して有意に低値(19.6±1.1mg/dL、P<0.05)であった。

 またBNPの心組織中mRNA発現量は、正常対照群92±23に対して無治療群では224±28と有意に高値(P<0.01)を呈し、Ca拮抗薬群で無治療群と比較して有意に低値を示したが、その効果はシルニジピン群でより高かった(シルニジピン群94±21、P<0.01、アムロジピン群95±7、P<0.05)。

 組織学的評価においては、AngII投与によって心筋サイズ(P<0.01)、心線維化(P<0.01)の有意な増大が認められ、これに対する抑制効果は、アムロジピン群と比較して、シルニジピン群で、より大きい傾向が認められた。

 また両群のRAASに対する影響として、(1)ACE2/ACE比率はアムロジピン群でのみ有意に低値(無治療群0.25±0.03、アムロジピン群0.14±0.01、P<0.05、シルニジピン群は0.18±0.02)、(2)AngIはアムロジピン群でのみ有意に高値、AngIIは高値の傾向、(3)Ang(1-7)/AngII比率は、シルニジピンでのみ高値、(4)アルドステロンは、シルニジピン群でのみ有意に低値であることが示された。

 川上氏は、アルドステロンがシルニジピン群でのみ有意に低値を示したことについて、N型Caチャネルがアルドステロンの分泌調整に関与していることを指摘。またアルドステロンはACEやACE2の発現量を調節することが報告されているとして、「本研究で観察されたシルニジピンによるACE2発現量増加やAng(1-7)の比率上昇は、アルドステロン低下作用によるものであることが示唆される」との見解を示した。

 さらに、「L型Ca拮抗薬アムロジピンは、降圧に伴い昇圧系であるAngI、ACE、AngII系を亢進するのに対して、L/N型Ca拮抗薬であるシルニジピンでは昇圧系の亢進作用は認められず、アルドステロン低下作用を介して臓器保護的作用を示すAng (1-7)の割合を上昇させることで、臓器保護効果を増大させていることが示唆された」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)