埼玉医科大学の木下俊介氏

 近年、独立した脳血管障害リスクとして血圧の変動が注目されているが、降圧薬の血圧変動への影響を、クラス間あるいはクラス内で比較したデータは少ない。埼玉医科大学木下俊介氏らは、降圧薬のクラス間、および脳卒中合併高血圧への処方頻度が高いCa拮抗薬のクラス内での比較を行い、ARBとCa拮抗薬はβ遮断薬に比べて脳梗塞患者の血圧変動への影響が少ないこと、Ca拮抗薬の中ではシルニジピンが、比較的影響が少ないことを見いだした。この知見は、10月20日から22日まで宇都宮で開催された日本高血圧学会(JSH2011)で報告された。

 本検討の対象は、埼玉医大神経内科を受診し、脳梗塞と診断された患者のうち、24時間自由行動下血圧測定(ABPM)を実施し得た440人。使用した降圧薬は、ACE阻害薬が35人、ARBが52人、β遮断薬が53人、Ca拮抗薬が168人であり、132人は降圧薬未使用だった。Ca拮抗薬の中では、ニフェジピンが14人、ニカルジピンが50人、アムロジピンが50人、シルニジピンが38人に用いられていた。

 木下氏らは、これらの患者のABPMデータから血圧の変動係数(CV:標準偏差を平均値で除したもの)を求めて血圧変動の指標とし、降圧薬の影響を比較した。

 その結果、使用降圧薬別にみた24時間全日の収縮期血圧のCV値は、ACE阻害薬群が14.5±4.3、ARB群が12.7±3.8、β遮断薬群が15.0±3.8、Ca拮抗薬群が13.8±3.5であり、ARB群とβ遮断薬群の間には有意な差がみられた。

 また、日中覚醒時の収縮期血圧のCV値は、ACE阻害薬群が13.1±4.3、ARB群が11.5±3.1、β遮断薬群が14.3±3.1、Ca拮抗薬群が12.6±3.4であり、ARB群とβ遮断薬群の間だけでなく、Ca拮抗薬群とβ遮断薬群の間にも有意差が認められた。

 続いて木下氏らは、降圧薬を投与された患者全体を覚醒時の収縮期血圧のCV値に基づいて五分位とし、降圧薬のクラスによって各分位層への患者の分布がどのように異なるかを調べた。

 その結果、ARB群ではCV値が最も低い分位層に属する患者が最も多く、CV値が高くなるほど患者数が少なくなる「右肩下がり」の分布がみられたのに対し、β遮断薬群では逆に、CV値が低い分位層で患者が少なく、CV値の上昇とともに患者数も増加する「右肩上がり」の分布を描いた。

 一方、Ca拮抗薬群では全ての分位層にほぼ同数の患者が分布していたが、Ca拮抗薬の種類別に分けてみた場合、シルニジピン使用例ではARB群に類似した「右肩下がり」の分布が認められた。

 このように、降圧薬のクラス間、クラス内薬剤間でCV分布パターンの違いがみられるにもかかわらず、各分位層の日中覚醒時の収縮期血圧値は、ほぼ同じ値だった。すなわち、薬剤間のCVへの影響は降圧度に依存しないことが示唆された。

 木下氏は以上の結果を総合し、「降圧薬はクラスの違い、クラス内の薬剤の違いによって、血圧変動に及ぼす影響が異なる可能性があると考えられ、今回の検討からは、β遮断薬よりARBやCa拮抗薬が、またCa拮抗薬の中ではニフェジピンやニカルジピンよりシルニジピンの方が、血圧変動の低減という点では、脳梗塞患者に適した薬剤である可能性が示唆された」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)