宮川内科小児科医院(横浜市)の宮川政昭氏

 東日本大震災のインパクトは、被災地から遠い地域に暮らす高血圧患者にも及んでいたことが報告された。比較的短期間であったが高血圧患者の家庭血圧が上昇し、少数ながら治療を要した患者もあったという。宮川内科小児科医院(横浜市)の宮川政昭氏が10月22日まで宇都宮で開催されていた日本高血圧学会(JSH2011)で発表した。

 宮川氏は、東日本大震災の発生以降、遠方の地域に暮らす高血圧患者にも、度重なる余震や計画停電、さらには悲惨な状況を伝える報道などにより、心身両面にわたって影響を与えたと判断。家庭血圧を毎日測定している本態性高血圧患者426人(男性163人、女性263人、平均年齢69.6歳)を対象に、震災前1週間から震災後3週間までの家庭血圧を解析した。

 その結果、起床後収縮期血圧は、震災前1週間に130.6±10.7mmHgだったものが、震災後1週間には131.5±15.7mmHgと有意に上昇していた。ただし、震災から2週間後には130.6±10.1mmHgと震災前の水準に戻り、3週間後も130.6±9.9mmHgと同水準を維持していた。就床前収縮期血圧は同様の推移だったが、有意差は見られなかった。起床後拡張期血圧は、2週間後に低下していたが震災前に比べ有意差はなかった。就床前拡張期にはほとんど変化が見られなかった。

 起床後脈拍は、1週間後に68.2±8.5回/分と震災前より有意に増加していた。その後は、2週間後に68.3±11.1、3週間後に67.9±8.6と震災前の水準で推移していた。就床前脈拍にはほとんど変化は認めなかった。

 これらの点について宮川氏は「家庭血圧への影響はあったが、比較的短期間であり、慢性的な昇圧はもたらさなかった」と考察した。

 実際の診療にあっては、震災後の血圧上昇や気分変調を理由に7人の患者が受診していた。うち2人は、震災直後に受診しており、脈拍の明らかな上昇を伴った血圧上昇だった。β遮断薬の服用により、5日以内には軽快している。

 ほかの5人は、震災から1週間以上がたってから受診した。血圧上昇は認めるものの脈拍上昇を伴わない例であり、震災直後の受診患者との違いが見られた。この5人はCa拮抗薬の投与により、2週間以内に軽快している。

 宮川氏が注意を向けたのは、自己測定の血圧値が上昇したことを気にして一時的に家庭血圧測定を中止していた30人だった。「残念ながら今回の解析には、この30例のデータが反映できなかった。これらの事例も考慮すると、震災の影響はさらに大きくなった可能性もある」(宮川氏)と指摘した。その上で、「震災の影響は個々の患者において違っており、高血圧治療における個別治療の必要性を感じた」と締めくくった。

(日経メディカル別冊編集)