新日鐵八幡記念病院循環器科の藤島慎一郎氏

 疫学研究に基づいて作成された心血管リスクスコアは、冠動脈病変の重症度との相関が一般に弱いことが指摘されている。新日鐵八幡記念病院(北九州市)循環器科の藤島慎一郎氏らは、脂質異常症、糖尿病、脳血管障害、閉塞性動脈硬化症(PAD)/腹部大動脈瘤(AAA)の保有数から冠動脈病変の重症度や冠動脈有意狭窄の有無を予測し得ることを、10月20日から22日まで宇都宮で開催された日本高血圧学会(JSH2011)で発表した。

 藤島氏らは昨年の同学会において、高血圧患者の冠動脈病変と「高血圧診療ガイドライン2009」(JSH2009)による脳心血管疾患リスク評価カテゴリーとの関連性を検討し、高リスク群と中等リスク以下群との間で、冠動脈狭窄の重症度に有意な違いは認められないことを報告した。そこで今回の検討では、症例数を増やして同様の検討を行うとともに、冠動脈有意狭窄との相関がより明瞭となる因子の組み合わせについても検討した。

 対象は2009年に待機的に初回冠動脈造影検査(CAG)を実施した連続272人。過去に冠血行再建術(経皮的冠動脈インターベンション、冠動脈バイパス術)を施行していた症例は除外した。患者背景は、男性が173人、年齢が72歳で、主な疾患の罹患率は高血圧が86%、糖尿病が44%、脂質異常症が59%、慢性腎臓病(CKD)が47%だった。

 JSH2009の脳心血管疾患のリスク層別化を基に患者をカテゴリー分類したところ、272人中248人(91%)が高リスク群に分類された。CAG所見から75%以上の有意狭窄の有無を調べ、冠動脈病変重症度の指標であるModified Gensini Index(MGI)を算出した。しかし、症例数を増やした今回の検討においても、血圧分類と冠動脈有意狭窄の有無やMGIの間には有意な関連は認められなかった。また、JSH2009の脳心血管疾患リスク評価カテゴリーも、冠動脈有意狭窄の有無やMGIとの有意な関連はなかった。

 そこで、年齢、性別、脂質異常症、喫煙習慣、高血圧、左室肥大、肥満、糖尿病、脳血管障害、PAD/AAA、CKDの各因子と冠動脈有意狭窄との関連性を調べるためにロジスティック回帰分析を行ったところ、冠動脈有意狭窄の有意な予測因子として、脂質異常症、糖尿病、脳血管障害、PAD/AAAの4つが抽出された。これら4つの因子は、単変量解析でMGIの有意な予測因子でもあった。

 これら4つの予測因子の保有数(0〜4)により患者を5群に層別化し、冠動脈有意狭窄の保有率を調べたところ、保有数が増えるほど冠動脈有意狭窄の保有率は有意に高まった(P<0.01)。その予測能は、保有数が1つ以上をカットオフとすると、感度87%、特異度30%、2つ以上をカットオフとすると、感度50%、特異度74%だった。また、保有数が増えるほどMGIも上昇し、保有数が2つ以上の各群は保有数が0の群に比べて、MGIは有意に高値となった。

 今回の検討では、冠動脈有意狭窄の予測因子として脂質異常症、糖尿病、脳血管障害、PAD/AAAの4つが同定された。藤島氏は、「これらの4因子の保有状況から患者を層別化すると、冠動脈有意狭窄率や冠動脈病変重症度に有意差がみられた。スクリーニング指標として、より有用である可能性がある」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)